2010年10月22日(金) |
『闇の列車、光の旅』 |
ホンジュラスで暮らす少女サイラ(パウリーナ・ガイタン)は、未来のないこの地を捨て、父と叔父と共にアメリカにいる家族と一緒に暮らすことを決める。 だがそれは、グアテマラとメキシコを経由する長く危険な旅だった。 なんとかメキシコ・チアパス州まで辿り着いたサイラたちは、アメリカ行きの列車の屋根に乗り込む。 そこには、同じようにアメリカを目指す移民たちがひしめきあっていた。 ほっとしたのも束の間、リルマゴ(テノック・ウエルタ・メヒア)、カスペル(エドガー・フロレス)、スマイリー(クリスティアン・フェレール)のギャング一団が屋根に上がってきて、移民たちのなけなしの金品を強奪。 さらにリルマゴは泣き叫ぶサイラに銃をつきつけて暴行しようとするが、以前同じような経緯で恋人を亡くしたカスペルは、手にした鉈をリルマゴに向けて振り下ろし、リルマゴは列車から転落する。 組織を裏切ったカスペルには、列車にとどまって旅を続けるしか選択の余地はなかった。 そんな彼にサイラは命を救われた恩を感じ、淡い恋心を抱くようになる。ある朝、カスペルがこっそり列車を降りたとき、サイラは父に黙って彼の後を追った。。。
イマドキ古臭く感じてしまう“アメリカンドリーム”という言葉。 しかし、未だにそのアメリカを目指す中南米の貧しい現実もあるんですね。 2003年に見た、ケン・ローチの『ブレッド&ローズ』をチョット思い出しました。
映画が始まった瞬間から「これ、もう絶対に悲しい結末しか訪れないだろうな…」という予感が漂う作品で…。 目を覆ってしまうシーンも多く、正直、見ていて辛かったです。
が…サイラを中心とした列車の話しと、カスペルを中心としたギャングの話と、そして2人が一緒になってからの話と、上手にまとまって進んでいくストーリーでした。
自分に置き換えて見ることは難しく、傍観者の目線になってしまうけど、、、不安と恐怖しかない密入国の列車の旅で、自分を助けてくれた青年に惹かれる気持ちは分かる。
「もしも自分なら?」 サイラと同じように、カスペルを追って列車を降りるだろうか…? 分からない…。 でも、列車の屋根に乗っていても不安と恐怖。 降りても不安と恐怖。 何をしていても、一寸先は死と隣合わせならば、その瞬間の思いや意志でどちらかを選択するだろうな。 どちらが正しいか、間違っているかなんて分からない。 それは、生死さえも分からないから。
ラスト、2人がついに川を越えてアメリカへ渡れる時が来る。 そして、予想どおりの悲劇が起こる。
あの後、サイラにどんな未来が待っているのか? きっと大きな荒波が待っているはず。 でも、生きている「光」はある。
救いようのないストーリーの中にも、ささやかな希望が見えて、とても見ごたえのある作品でした。
新聞や雑誌の評を読んでずっと見たいと思っていて、やーっとこちらの小さな劇場で公開。 見に行けてよかったです。
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