女性の罵り
 きつとあの人は安心したかつたのだ。
 僕の手の屆かぬ樣に全ての状況を運び、其の上で安心材料を得たかつたのだ。

 何度も何度も彼を言葉の刃で傷付けて、それでも不安だつたからこそ彼女は僕で確かめやうとしたのだ。
 僕は手を出せぬと思つたからこそ、彼女は高位からの物言ひで僕を罵り、態々彼の現状を告げたのだらう。
 さう、僕は手を出さない。元々彼に執着などしてはゐないのだから。

 それだけあの人は不安なのだらうか。
 そんなに彼は彼女を不安に陷らせるに足る行動を取つてゐるのだらうか。

 彼女と彼を氣遣ひながら、ちやんと僕は惡役になつた。
 これでいいのさ。これで。
2003年12月25日(木)
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