呪い
 僕を見捨てようか迷つてゐる人に僕は何時も呪いの言葉を告げる事にしてゐた。
 なあに、呪いの言葉といつても何も恐ろしい恨み文句を云ふ譯ぢや無い。
 單に「君は絶對今僕を見捨てた事を後悔するよ。今はそんな事無いと思つたとしても何年か先そして何十年か先に後悔しないといへる保證はある?ふとこの事を思ひ出した時にあの時ああすれば違ふ未來があつたかも知れ無いと悔やまぬと斷言出來る?」といふだけだ。
 「きつと君は後悔するよ。」と、さう勝手に斷言して相手の目の奧を覗き込むだけなのだ。

 さう、きつと君は後悔するのだ。
 僕を助けたとしても助け無かつたとしても。
 どうせ悔やむなら助けた方が氣持ち良かろ?
2003年07月26日(土)
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