睡+涙
 断続的にしか眠れないのが辛い。
 今の僕は晴明の結界の中に居るのだと思っても矢張り気休めでしか無い。
 あれは外から来る鬼では無く、僕の中に九年前から居るものだから。

 どんなに短い眠りの間にも必ず彼の人が夢に出て、僕は己の涙の冷たさに目を覚ます。
 何度眠っても同じ夢を見る。そして涙を流す。
 目を覚ます度に涙の冷たさと顔が溶けそうな熱さを感じる。
 そうやって何回も目覚める内に、何か僕の大事なものが少しずつ疲弊して取り返しの付かぬ程に迄損なわれていくのが僕には判る。

 うまく眠れたうちはうまく泣けた。
 今はうまく眠れず、うまく泣け無い。
 だけど、まだ眠れる。まだ泣ける。
2001年10月26日(金)
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