浮遊
 近頃、更に鏡を正視出来無い。
 鏡に映る僕の表情は今にも泣き出しそうだから。
 鏡中の己と目が合う度、表情を消して作り直してしまうから。

 曇り空や血の赫が何かを象徴して居る様に思える。
 細かく降り注ぐ雨は僕に全部忘れた事にしてしまえと教える。
 莫迦の様に緑に染まり続けて来年のあの日こそ最期の場を探せ。
 圧壊した瓦礫の下敷にされた金色の人の痕跡を見付け出せ。

 こんな寂しい幻想から、僕は早く浮かび上がらなければならない。
 僕は早く僕に戻らなくてはならない。
2001年09月13日(木)
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