Diary?
DiaryINDEX|past|will
熱海って微妙な場所で、東京・関西間の移動の多かった私にとってはパッシングスルー、20年あまりただ通り過ぎるだけだった。新幹線に乗っていても、こだまじゃないと停まらないから「熱海駅」の存在もあまり認識していないような有様。伊東や下田に旅行することはあったけれど、それでも熱海は通り過ぎるだけだ。
個人的に、熱海のイメージは何だか淫靡なものだった。道ならぬ恋、人目を忍ぶ逢瀬。何だろう、何かそういう小説か映画にでも出てきたのだろうか。その後の大規模な観光ホテルやリゾートマンションについては知る機会がなく、イメージが書き換えられることがなかった。
今回初めて熱海駅で降りて、ホテルニューアカオに泊まってきた。このホテルも関東の人にとってはテレビCMでおなじみらしいのだが、私には全く予備知識がなかった。ディナーショーがあるっていうから、ハトヤみたいな感じなのかなーと思って足を踏み入れてみたら。そこは「リゾート公国」だったのだ。

海の上にそびえ立つミッドセンチュリー建築、窓の外は見渡す限りの海とサスペンス劇場な断崖絶壁、ディナーショーは浴衣禁止、和洋折衷のコース料理を食しつつニュージーランドのミュージシャンのポップス演奏を楽しむ。会場もレストランシアターのような趣きである。夜にはドレスを着てダンスホールへ急ぐ人を見かける。なんだここは。公国と名乗るだけのことはある。モナコやニースのイメージなのだろうか。
自粛と節電の嵐が吹き荒れる昨今、夜景ガイドや海上花火は中止され、震災の影響かどうかは不明だが館内は修繕工事中の箇所もあったけれど、私は大満足だ。ニュージーランドのバンドの人たちが、どういう経緯でここで演奏しているのかがとっても気になったが。

翌日チェックアウトしてから、敷地内の山ひとつまるごと使ったローズガーデンへ。ここも一貫してヨーロッパ風にしつらえてある。日本庭園でさえ、なんとなく外国の万博の日本庭園みたいな感じ。6月に行けば、薔薇でむせ返るようになっているのだろうな。この時季はチューリップが見事だった。

ちなみに私はフランス風の幾何学的な庭園を見ると「去年マリエンバートで」を思い出して不可解なような不条理なような気分に陥ってしまう。映画を観てから四半世紀は経つというのに。帰途、小田原で途中下車してお城でも見て来ようかと思っていたのだが、なんだかローズガーデンでおなかいっぱいというか、マリエンバートな気分もあって湘南新宿ラインでまっすぐ帰ってしまった。今度行くことがあったら、熱海の市街地をもうちょっと探検してみたい。
|