Diary?
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今の職場はオフィスビルの20階にある。10年近く前にこのビルに移ってきた時は、スタッフみんなが「なんか気分わるーい」状態に陥ったものだ。その前が2階だったしなあ。三半器官が慣れなかったようで、会社帰りにビルから出てしばらく歩いてから突然ボンッと抜けたりしていた。いきなり周囲の音が大きくなるのでぎょっとする。
10年近く経って20階の高度に耳も慣れて、気持ち悪くなるのは地震の時くらいのものだ。窓が芝浦の方を向いているので、「芝浦の島」が視界を遮ってゆく様子を定点観測しようと、時々同じ場所から写真を撮ったりしてそれなりに高層ビルライフを楽しんでいた。
ところが、だ。同じビル内でフロア移動があって、来週末に30階に引っ越すことになってしまったのだ。フロア移動はよくあることで、まるでパズルのようにあちこち動いているのだが、まさかうちの部署が。ちなみに私の職業は司書で、だから職場は社内にある図書館だ。本がたぶん2万冊くらいある。このビルにいる以上は移動はなかろうと高をくくっていたのだが、甘かった。しかも30階て。酸素が薄いんじゃないかとか、高山病になるんじゃないかとか、10年モノの蘭の鉢は高度変化に耐えられるだろうかとか、いろんな想像をしては怯えているのだ。芝浦の島の定点観測も頓挫だ。しかし最近はオフィシャルサイトで一日単位の定点撮影が公開されているのでまあいいか。
そんなわけで、日々は引っ越しの準備でばたばたと過ぎてゆき、ついつい日記を書くペースも落ちているのだった。ふと気づけば一週間書いていなかった。そんなに残業しているわけでもないけれど、何となく気分が落ち着かなくて。とか言いつつ昨夜はなぜか突発的贅沢会。西原理恵子さんの「恨ミシュラン」で読んで以来、気になりつつも機会のなかった土佐の「皿鉢料理」を食した。いやこれは。何と申しましょうか。西原理恵子さんの文章通りだったとしか言いようがない。とにかくなんでも盛り合わせ。刺身。伊勢エビ。蟹。見たことのない貝。煮物。トマト。キュウリ。イカのマリネ。押し寿司。なんでも本場では水ようかんだのカステラだの、お菓子まで一緒に盛られているらしい。だいたい蟹って、土佐? もう、美味しいとか不味いとかいう問題ではない。面白くてしょうがなかった。恨ミシュランを読んで10年以上経つけれど、西原さんの文章が皿鉢料理に関して全てを語り切っていたのだなあとしみじみ感動したのだった。
そして考えてみると皿鉢料理を食したのは地上50階だった。高い所が嫌いじゃなくて良かった。どちらかというと好きだ。でもなあ、5月から毎日地上30階かと思うと、それはそれで何だか楽しいんだか辛いんだかよくわからない。なに、生き方そのものが地に足ついてないからお似合いだって?ええい反論できなくて悔しい。
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