日記

2010年08月11日(水) 精霊モノガタリ途中経過過去編その2

 軽い設定があれば、勢いでここまでは書けるんだよねぇ。先は続かないけど。

 というわけで過去編その2アップ。
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 そんな時、不穏な動きが朱鈴の周りで起こっていた。彼女の王位継承権は13位、しかも有力な後ろ盾はなく、今までは見向きもされていなかった。
 しかし、彼女の才覚と霊力は他の継承者とは桁外れだったため、一部の貴族が彼女を担ぎ出せないかと動きだしていた。またそれに呼応して他の継承者を擁立する者たちとの対立ができ始めていた。

「最近、狙われることが多くなったわね」
<<そうですね。気づいた端からあなたに告げていますから、今のところ大丈夫でしたが>>
「本当に『白蓮』には助けてもらってばかりだわ。契約すらしてなくて、何も返せないのに」
<<お側にいられるだけで幸せですから>>
 笑顔を見せてくれたが、すぐにその笑顔が曇った。
「『奏』、まだ起きてこれないのかしら」
この頃になると『皓月』がなぜ力を消耗したのか、うすうす気づいているようだった。それに気づいているのか、朱鈴の力が解放された後は『皓月』は一度も姿を見せていなかった。
<<まだ力が回復していないのでしょう。回復の兆しは見られますので、時間がたてばきっと起きてくることができるでしょう>>
「回復しているのなら、いいわ。いくらでも待ってあげる。そして起きてきたら、めいっぱい文句いってやるんだから」
 彼女は霊力が解放されてから、多少の力なら精霊と契約することなく使うことができるようになっていた。それにより刺客を退けていたが、限界が迫っていた。
<<契約者の刺客を送り込まれたら・・・。私は直接的に力を使うことができません。『皓月』、いつか回復すると信じています。間に合って>>

 ある風の強い日、私は彼女とともにあった。
「今日は本当に風が強いわね」
<<そうですね。季節の変わり目とはいえ、こんなに強いのは久方ぶりかと>>
 風にまぎれて、一瞬気配がした。
<<朱鈴、今・・・>>
「えぇ、気づいたわ。でも、今はもう気配がしない。厄介だわ」
<<契約者、でしょうか>>
「たぶん、そうでしょうね」
 今まで来た刺客とはレベルが違っていた。私は察知したことを彼女に伝えることはできるが、直接的に刺客には何もできない。
 気づいたときには室内に黒い装束の男が刃を彼女に向けていた。
<<朱鈴!>>
「っく」
 なんとか一太刀目はかわすことができたが、すでに次の刃を繰り出していた。これはよけれない・・・。
 そのとき『皓月』の声が聞こえた。
<<朱鈴、私の名前を呼んでっ>>
「『奏』!」
一瞬で現れた『皓月』は、刺客の刃を粉々に破壊した。そして刺客の命を奪う。
<<よかった。朱鈴無事だね>>
「『奏』・・・」
無理を押して出てきた『皓月』の体はもう保てないほどに消えかけていた。
<<ごめん。無理して出てきたから、朱鈴を抱きしめられない>>
「『奏』・・・『奏』」
<<最後まであなたを守りたかったのに・・・>>
「いや、いやよ」
<<ごめんね>>
「『奏』。『皓月』、消えないでっ」
<<朱鈴の願いはすべてかなえてあげたかったのに。ごめんね、もうかなえてあげられない>>
どんどん『皓月』の体が消えていく。
<<ありがとう、私の大切な誓約者・・・>>
その言葉を最後に『皓月』の体はすべて消え去ってしまった。
「『奏』、消えちゃった」
<<・・・最後の力を振り絞って、あなたを守ったんです>>
「『奏』が消えてしまったら、意味がないじゃない。いつか『奏』と『白蓮』と三人でまた笑えるようになるために、がんばってきたのに」
その日、朱鈴は声をあげて泣いた。彼女が泣いたのは、それが最後だった。

次の日、彼女は強い意志を宿した瞳で私を見て宣言した。
「『白蓮』、あなたの力を貸してほしい」
 深い悲しさを秘めているのに、とても強い力を感じた。
<<あなたと誓いをかわすことができればと思っていました。でも、こんな形でかなうとは・・・>>
「ごめんね。私は『皓月』と誓約したから、他の精霊と誓約しない。だから、『白蓮』とは契約でしか誓いを交わせない。でも、今はあなたの力が必要なの」
いつか『皓月』の言っていた言葉を思い出した。もし自分がいなくなったら朱鈴を頼むという言葉を。こうなることを予期していたのだろうか。
<<・・・あなたが謝る必要はありません。私はあなたと誓いをかわせるだけで満足です。さぁ契約を交わしましょう。私の力を存分にお使いください>>
「ありがとう、『白蓮』。私は、王になるわ」

 そうして、彼女は一国の王となった。彼女は賢王と呼ばれるようになった。しかし、その美しい顔には暖かな笑みを浮かべることがなかったため、凍花王とも呼ばれた。
 国のために、婚姻し3人の子をもうけ、そのなかで第二王子が霊力・才覚を現したため、王子が成人後王位を譲った。朱鈴は王位を譲る際に私との契約も解除した。
 私は次の王と契約をした。
「『白蓮』、あなたは自由なところに行ってもいいのに」
<<私はあなたのことを見守りたいと願っています。そして、あなたは自分の子を見守ることが願い。ですから、私はあなたの子孫を見守っていこうと思います>>
「ありがとう、『白蓮』・・・」

 その後、しばらくして朱鈴は病に倒れた。病状は深刻で、残された時間はわずかだった。小康状態になったある日、ぽつりとつぶやいた。
「『白蓮』、私は後悔しているのかもしれない」
<<何を?>>
「『奏』と誓約したことを」
<<なぜそのようなことを思うのです>>
「だって、私と誓約しなければ『奏』は今も存在できていたはずなの」
<<それは違います。精霊は誓約できるほどの人と会えるのを最上の幸せとしています。そして、そんな相手と誓約を果たし、力を使うことは無常の喜びなのです>>
「でも・・・」
<<『皓月』は幸せでした。たとえ願い半ばで消えたとしても。一時しか契約をできなかった私ですら幸せだったのです。出会えたこと、誓約できたことを後悔しないでください>>
「うん。そうだよね。『奏』と出会えたのは幸せだった」
<<えぇ。私もあなたに出会えて幸せでした>>
「私も『白蓮』に出会えてよかったよ」
『皓月』が消滅してから、見せる事のなかった笑顔を浮かべる。ずっと気持ちを抱えていたのだろう。もっと早く彼女の気持ちを聞ければよかったのに。私ではそこまで踏み込めなかった。
「ありがとう、『白蓮』」
<<朱鈴、少し眠りましょう。疲れたでしょう?>>
「うん、お休みなさい」
<<おやすみなさい。、朱鈴>>
 そして、その後眠るように朱鈴は息を引き取った。

 彼女が逝ってしまった後も、私は歴代の王と契約を行っていった。そして、いつしか私との契約が王の選定条件となるようになった。
 彼女の血を受け継いだものから、できるだけ賢王となれる器の者を選んでいった。ただ、王の資質と霊力を両立しているものは少なく、私の力を使えるような契約者はなかなか現れなかった。
 精霊として、より力のあるものとの契約を優先したい気持ちを抑えるのはなかなか骨だったが、それでも彼女の望みの方が強かった。
 そして、国は栄えていった。
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 連続して公開してきたけど、今書いている分はこれでおしまい。この後どうするかなぁと思案中。
 いっそ設定をごっそり変えるかなぁ・・・。

 勢いで書こうとするのはそろそろやめないと意味ないモノが増えていくと思ってはいるんだけどね。どうにも完結することができないんだよねぇ。
 まぁ根気が必要ってことなんだろうけど。


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