10日の集金で隣町の酒屋さんへ。
父の友人でもあり、酒販店が元気だったころのよもやま話を聞かせていただくことが、ほろよいの楽しみです。
数年前体調をくずされ、店頭売りと近所の配達だけを行われていますが、お元気なころは小売酒販組合の理事長を何期も勤められ、税務署のお酒担当の方にも歯に衣をきせず、理路整然と意見をのべられる優秀な方でした。
その方いわく「昔は(酒税の保全のために)安売りを一切させないよう税務署は指導をし、組合もそれに協力してきた。組合で決めた缶ビールの『冷やし代』10円加算でさえ、サービスでタダにしている小売店があれば、組合員から違反の通報があったし、自分も『これくらいは仕方ないじゃないか』と思いながらも、理事長の立場として是正するようお願いにいったものだ」と。
ビールの冷やし代サービスに対する反発は、ほろよいもいかがかと思いますが、当時は酒販店が安売りをし経営状態が悪化すると酒類製造業者の売掛金の回収が難しくなり、ひいては酒税納付に影響するという考え方が当局に強くありました。
ご興味のある方は酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(酒団法)1条と84条をご参照。メーカーから酒販店まで、お酒の業界はこの法律と酒税法の2つで規定されています。
当然といえば当然なのですが、法律の目的が「品質保全」より「酒税の保全」を優先しているところが、日本の酒類市場の現況を作り出したのだと思うのです。
話を戻します。バブルの崩壊とデフレの進行、そして規制緩和の流れの中で、昭和の末年から酒の安売り店がつぎつぎと出現し、当初は官組一体となって安売是正の指導をしていたものの、いつのころからか、なしくずし的に当局の指導が弱まっていきました。
そして酒類の不当廉売の指導は、酒団法に基づいた税務当局の手から、独占禁止法に基づく公正取引委員会の手にゆだねられていったのです。
結果的に税務当局から見放された酒販組合は孤立し、消費者さんから見れば規制緩和にタテつく時代錯誤の集団になってしまったわけです。
「こういう時代なのだから定価販売がすたれていくのはしかたないけれども、当局の指導にしたがって協力してきた組合に対し『今後は当局として価格指導は行いません、長い間ご協力ありがとうございました』くらいの挨拶が欲しかった」と憤然とおっしゃるのです。
組合費をわざわざ払って組織に所属するメリットもなく、現在、今津小売酒販組合の組織率は50%をはるかに割り込んでいます。もはや酒団法第3条以下で規定された官製組合の体を成してはいないのが現状なのですが、これから税務当局は組合組織とどうお付き合いされていくのでしょうか。それなりの意思表示が必要なところだと思うのです。
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