「…ねぇ」 「ん?」 「あの、さ…」 「…うん」 「……、…」 「……どうしたの?」 「…、な、なんでもない」 それだけのやりとりを、もう、何度繰り返しただろう。 最初に声をかけたのがどちらだったのか、いまではもうわからない。 ここに来た理由さえ、もはやどうでもよかった。 星明りの中、甲板に人影は二人きりだった。 自分と、相手と。 背中越しに、時折身じろぎする気配が伝わってくる。 さすがに夜になると気温も下がる。寒いなら中に入ればいいだけのことなのだが、なんとなく機会を逃して、彼らはそこにいた。 頬にあたる風は冷たかったが、背中に伝わってくる体温だけは、暖かかったから。 翌朝。 結局、何をするでもなく一晩中夜風にあたり続けた二人は、当然のごとく熱を出して医務室に運ばれた。こってりと怒られて、この症状に効く薬なんてありませんよとまで言われたにも関わらず、熱を出してうなされているはずの二人の顔は妙に緩んでいるように見えたという。 ***** レイセドレイのつもりです今晩和。 久しぶりにお題ですよ奥さん!(誰) 幻水4の小説に触発されてうっかり(?)復活してみました。 どうにも、文章中にキャラ名を出すのが苦手です。と、前にも書いた気が。 結局、また一回も誰も出てこなかったよ…。
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