やっぱりね。 仕事をしている日は、仕事が頭の中を支配しちゃいます。 ココに書くことも、どうしても仕事の話になってしまいがチ。 ・・と、そんなわけで、今日も、ヨロシク。
今、ワタシは、3泊するお客サマの担当をしています。 お客サマのほとんどは1泊だから、その中でも3泊する方々って、珍しい。 担当の私も、毎日料理が変わって、それを全部覚えて、 自分が担当している1泊の方、2泊の方のお料理もあるから 間違えないように出すことなんかで、頭とカラダはいっぱいいっぱい。
お料理を出し間違えると、私達は、罰則として、次の日、朝の5時半に 板前さん達と同じ時間で出勤して、調理場を手伝わなければならないという ルールがあるから、結構心臓ドキドキなんだなぁ。
そうそう、いつもは1泊の方々4組、とかなのに、 明日のワタシの手持ちは1泊目、2泊目、3泊目、全部あるから
お料理が全部全部違っていて、板場出勤する可能性に 限りなく近い所にいたりする・・・おお、コワ。 しかも、ワタシ、料理だし間違え常習犯だから。 ホント・・・すいません。
イヤイヤそんなことはいいんです。 なにがいいたかったかっていうとさ、 その、3泊する人達。名前は、「ハタノさま」といいます。 中年のご夫婦と、多分その後両親、の、4名サマ。 老夫婦はもう、おじいちゃんとおばあちゃんで、 耳は遠くてほとんど聞こえないし、補聴器つけてるし、 お話もしないし、フツウの早さで歩くことも出来ません。 そんな老夫婦と、中年夫婦。 きっとコドモであろうその中年夫婦は、おっとりしていて、物静かで、 自分からしゃべるような人ではありません。
明日、彼らは3泊目です。 ワタシがハタノさまのお世話をさせていただき始めて、3泊目、ですね。 ワタシは、彼らと、まだあまりちかづけていません。
今日、家に帰って、トイレの中で考えました。 彼らにとって、今回のこの旅行に、題名をつけるとしたら、 どんなモノなんだろうか、と。
中心になって、動いて、ひっぱっているのは、中年夫婦。 老夫婦は、それについていく、と言うカンジ。
そして、おじいちゃんとおばぁちゃんに、とても優しくしているのが 見ていてわかる。
今日もお食事中、おじいちゃんが途中で席を立って トイレにいこうとしました。 ワタシは、「だいじょうぶですか」といって、 あわててかけよった。 おじいちゃんの背中を支えてあげた。 「おじいちゃん、トイレですか?一緒にいきましょうか」 といって、ほほえんだ。 そして、一緒に歩いて、トイレまで行こうとした。 だって、おじいちゃんは、歩くとき、スゴク呼吸が荒くなって、 はぁはぁ、している。 足取りも、おぼつかない、そんなカンジ。
すると、中年のご主人様が席を立ってそこまできて、 「いいよ、だいじょうぶだよ、一緒に行くからね」
と、私に言った。
ワタシは、おじいちゃんと一緒に行きたかった。 でも、一緒に行けなかった。
なんで???
ワタシは、ハタノさまの中で、体の悪いおじいちゃんを まかせられる、仲居になれていないんだろう。 彼らの中で。この、二日間の中で。
寂しい。 3日間お世話する仲居に、おじいちゃんをまかせられる、この旅行に そういう気持ちをもってもらえたら、ハタノさまの ココロはどれだけあったかくなるだろう。
きてよかった、おじいちゃん、ばぁちゃんも喜んでくれた、 自分たちも、いい出会いがあった、いい仲居さんにあえたなぁ、 っていう気持ちがうまれたら、どれだけ、どれだけ・・・・。
彼らは、きっと親孝行をしているんだろう。 おじいちゃんとおばぁちゃんを招待したんだろうと思う。 みていてわかる。 3日間で、お金はきっと、全部で30万はかかっている。 そんなに莫大なお金を出して、のんびりとした伊豆に、3日間も、 おじいちゃのばぁちゃんを招待する。
すごいことだ。
この旅行の題名、もしかすると、 『最後の思い出に、思いきって。いい思いさせてあげたい旅行』
・・・なのかもしれない。
そう、思った。
彼らに、ワタシは2日間でなにをしてあげることができただろう。 こんなに重みのある旅行に携わっていて、なんの力になれただろう。 なれるだろう。
おじいちゃんと、おばぁちゃんに、シアワセなキモチを味わってもらいたい。 どうしても、どうしても!!!
招待したであろう、二人の中年夫婦に、あったかい気持ちになってもらいたい。 どうしても!!!!
ねぇ、ワタシに、なにができる??
昨日、今日、と2日間、一生懸命、近づこうとした。 おじいちゃんに、おばぁちゃんに、寄り添おうとした。 お父さん、お母さんに、心を見せようとした。
でも、ワタシは、おじいちゃんを一緒にトイレに連れていってあげる ことを、遠慮させてしまった。
ダメだよ、これじゃぁ。
明日は、ハタノサマの最終日、3日目。
あさっての朝には、かえってしまう。 もう、残された時間はあと、わずか・・・・。
勝負は、明日、だ。
絶対に、絶対に、絶対に、
もっと、彼らを、愛そう。 ワタシに、おじいちゃんの、お世話を、させてクダサイ
もっともっと、愛そう。 うまくいえないけど・・・・
ハタノサマの物静かで、ステキな笑顔が、よぎった。
その笑顔、本物に、したい。
このままじゃ、絶対に、ハタノさまとわかれた後、後悔する。 もっと、ちかづけたのに、もっともっと、できることが、あったのに、 もっと、もっと・・・・
おじいちゃんと、おばぁちゃんが、とてもいとおしい。
明日は、勝負だ。 ハタノさま、まってて・・・・。
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