この前の続き・・・。
結局、帰ってきた娘は、まだ、おなかが空いてないと言い続けていた。
ふと、「おなか空いた。」と無意識に口から出てくるので、
「おなか空いたの?」
「あ、ううん、空いてないから!全然空いてないよー。本当は空いてるけど、空いてないんだからね!」
「どっちやん。」
「だから空いてないって。」
「そう・・・。美味しいうなぎがあるよー。空いたら言いな。」
そんなことを繰り返して、結局、夜中の1時くらいに我慢できなくて「おなか空いた。食べたい。」と言った。
でもって夜中の1時にうなぎを温めたのである。
さて、それですべてが終わったのか、というとそうじゃない。
娘は、まだ心の中で葛藤していた。
素直になれない自分と、素直な自分と、どうしていいかわからない自分と。
二度、風呂場でバトルした。
娘の言葉が悪いので注意するとお湯をかけられた。 でもって私はお湯をかけ返した。
あっちもお湯をかけてくるので、こっちはお湯をかけ続けた。
蹴ったり殴ったり暴れるので、両手を押さえた。
後ろから両腕を抱えたりした。
殴りはしない。
相手の自由をうばうだけ。
そのうち、シャワーをかけ続けたり、戦った。
かわいいなあと思った。
必死に自分の中で葛藤している娘を、心からかわいいと思った。
切りのいいところで、私は風呂場を後にする。
あっちは裸だが、こっちは洋服を着ている。 洋服はもう絞れるくらいびしょびしょだ。
着替えてしばらく放っておく。
娘は出て来ない。
音がするか時々聞き耳を立てて、しばらくすると風呂場の床にバスタオルを敷いて寝ていた。
「風邪ひいちゃうよ。洗ってあげようか。」
おとなしくなっている。
頭を洗ってやる。。
身体を洗ってやる。
拭いてやる。
着替えさせる。
寝かせる。
娘は話し出す。
話を聞いてやる。
「ママ、寝るまで傍にいて。」
手をにぎったり頭をなでなでしてやる。
「毎日よく頑張ってるね。エライね。」
娘のほうから話し出す。 たくさんたくさん話し出す。
「ね、エライでしょ。」
と言う。
「本当エライよ。」
と言う。
さっきまで風呂場で「さわるな!気持ち悪い!あっち行け!」と言っていたのに、やっぱりまだまだ子ども。
私は思いっきり正面から向き合って、思いっきりかわいがってやることにした。
娘が娘なりに、新しい環境で頑張っていること。 いろんな人の中で、娘なりに人間関係を築いていること。
毎日学校に通うことも。 時々宿題することも。 ピアノへ行くことも。 塾に行くことも。
エライと思うよ、と言った。
「あっ、補習あるのかと思ったけど、なかったよ。」
「よかったね。」
成績が悪い子は夏休みに補習があると聞いていたが、社会も理科もかろうじて補習はまぬがれる点数だったようだ。
「夏季講習はやりたい、絶対やりたい。」
「じゃあ、頑張って行かないとね。」
「うん、次は頑張って行く。」
「パパがね、今の成績なら十分そのまま大学まで行けるって言ってたよ。」
「ほんと?」
「だって、行けなかったらあなたより成績悪い人みんな行けなくなっちゃうじゃない。それは人数上ありえないもの。ママはね、クラブ活動一生懸命やってほしいと思ってる。成績なんて中の下くらいでいいんだよ。それにクラブ活動が頑張れる子は、勉強も頑張れると思ってるよ。そうそう、先生言ってたよ。演奏会終わると2日くらいは保健室でくたばってるらしいよ。それでいいと思うよ。」
「明日からクラブ頑張るよ。」
「明日はクラブ休みだから明後日からだね」
「ああ、そうだった。友達と話してたときは覚えていたのになあ。明後日から頑張るよ。」
いっぱいいっぱい話すと、
「明日また続き話すね。」
と言った。
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