2003年11月08日(土) |
マーチングバンド〜関東大会〜最悪な事態 |
朝6時に起きて息子のお弁当作り。
今日は娘の塾が昼過ぎからあるので、友達に朝から預かってもらうことになっていた。 朝8時半に友達に娘を預け、夫の車で一緒に学校へ向かう。
父兄たちが集まって楽器の積み荷を手伝った。
生徒たちを前に顧問の先生は、
今まで頑張ってきたのはこの日のため。演奏が終わるまでは遊びにいくんじゃないんだから、練習してきたことを無駄にしないように最後までしっかり頑張れ。
と言った。
感極まって涙がつつーっとこぼれた。 同じように泣いているお母さんたちがいた。
子どもたちに周りを見渡すように言い、支えてくれているみんなに挨拶をするよう言い、
「言ってきます」
と、子どもたちは元気に笑顔で出発した。
バスから手を振る子どもたちを、親たちはいっぱいいっぱい手を振りかえした。
私と夫も車で向かった。
他の学校の演奏の途中で、夫は他のお父さんと一緒に楽器の積み卸しを手伝いに行った。
昼過ぎに実母も来ることになっていて、その前に昼食を買うために会場内のケンタッキーに行く。
すごく並んでいて、やっとあと10人番目くらいというところになって、カツサンドセットとチキンフィレサンドセットの看板が外された。 ポテトと飲み物,チキンしかないらしいということがそれで並んでいた人たちに伝わり、前の10人くらいがごそっと抜けた。
レジは2つある。 隣のレジに並んでいる人がチキンフィレサンドセットを頼んだ。
「残り1つでーす」
と、隣のレジ係りが言う。
私は前のレジの人に 「チキンフィレサンドはありますか?」 「はい、あと1つあります。」 「では、1つお願いします。」
厨房に 「チキンフィレサンド売り切れでーす。」
と響き渡る。
よかった。 夫は、昼はチキンフィレサンドを食べると決めていたから、途中でお弁当を買ったりしなかったんだ。
時間がまだ少しあったので、自分の分はどうしようかと、ロッテリアに並び、チーズバーガーセットを頼む。 私、チーズバーガー嫌いなんだけどなあ。
チキンフィレサンドだけ大事にバックに入れて会場入口に向かった。
夫から席に戻ったとメールがあった。 最後の一つのチキンフィレサンドをゲットしたから待っててね、とメールで返した。
母を拾うと席に戻った。
いよいよ子どもたちの演奏だ。
今まで観たことないくらい上手だった。 親たちは顔を合わせて「全国に行けるかもしれない」という顔をした。
特に夫は興奮していた。
数日前から緊張しっぱなしだったのだ。
夫は楽器の積み荷を手伝いに行った。 帰ってきてまだ子どもたちか帰って来ないことを気にしていた。
やっと戻ってきた子どもたちはまたロビーに出て行ったようだった。
子どもたちは号泣して席に戻ってきた。
私は見ていない。 夫が見て心配して私に告げた。
まだ結果は出てないはずなのにただごとじゃ雰囲気だと。 みんな号泣している、と。 何かあったんじゃないか、と。
しばらくして親のひとりが世話役さんから聞いてきて、私たちに教えてくれた。
先生は指揮が終わると同時に「全国に行けるかもしれない」と感極まって泣いたそうだ。 はけてすぐ呼ばれて「規定違反だよ。」と言われたそうだ。
子どもたちはこの日のために頑張ってきた。 休みも返上して、熱があっても冷えピタを貼って練習していた子も何人もいた。 本当に本当に頑張ってきたんだ。
子どもたちは精一杯演奏した。 本当に上手かった。
でも審査さえしてもらえない。
なんてかわいそうなんだろう。
親でありながら、 かわいそう、という言葉にしか出なかった。
ずっと、ずっと、かわいそう、かわいそうに、と言い続けた。
最後の発表の時は、6年生たちが前に並ぶ。
「失格」という言葉をかき消すかのように、下級生たちは代表で前に出ている6年生たちに学校の名前を何度も何度も叫び続けた。
子どもたちが席を出ると親たちはその後をついていった。
会場の外で、先生は泣いていた。 子どもたちは先生を励ました。
学校に先に着いた私たちは子どもたちを待っていた。 電車で行った親たちも来てみんなで子どもたちを待っていた。
親の数人は泣いていた。
かいわそうに、かわいそうに。
子どもたちが帰ってきたら、いっぱい褒めてやろう。 よく頑張ったね、って言ってやろう。
絶対泣いちゃだめだよ。
そう言っていた。
子どもたちが入ってきて、
みんなで精一杯の拍手をした。 子どもたち一人一人に
「お帰りなさい!!」 「お疲れさま!!」
と声をかけた。 左手は怪我してまだ腫れて痛かったけど、いっぱいいっぱい拍手した。
先生は泣いていた。
率先して「泣いちゃだめたよ。」と言っていたお母さんが、真っ先に泣いて涙でぐしょぐしょになっていた。 私も涙があふれてしかたなかった。 だから人の影に隠れて友達といっぱいいっぱい拍手して大きく声かけをした。
先生は集まった父兄たち、生徒たちに謝った。 自分のミスだと言った。
子どもたちは「先生のせいじゃない」と言った。
6年生たちは、「私たち留年します。金管は辞めません!!」と言った。
泣かせるねえ、とお母さんたちまた泣いた。
世話役さんたちも顔をくしゃくしゃにして泣いていたりした。 指揮をした先生たちも泣いていた。
息子は帰るや否やベッドにうつぶせになった。
「全国に行けなかった。」
と顔を布団にうずめていた。
「行きたかった。」
顔をうずめていた。
「もう疲れた。」
うずくまっていた。
「お疲れさま。本当に頑張ったね。すごくよかったよ。明日と明後日はゆっくり休みなさい。 また24日にはイベントがあるから、頑張らないとね。 6年生はもう無いけど、あなたにはまだ来年があるんだから。頑張れ。」
「連れて行きたかった。」 「一緒に行きたかった。」
枕を顔に押しつけて言った。
私は涙が出てきて、息子の部屋を後にした。
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