朝起きて娘は、また苛立っていた。 机に向かって勉強している風であったが、私が部屋に入るなりそのイライラを私にぶつけた。
「もう反抗しないって約束したんじゃない?あれは嘘だったの?」
娘は黙っている。
私も黙る。
娘は泣き出して 「いい子でいたいもん。反抗なんかしたくないもん。でもいい子でいたいのに、いい子でいられないんだもん。」
私は、椅子に座っている娘を抱きしめた。
「それでいいんだよ。泣いていいんだよ。泣きたいだけ泣きな。泣いてる間は、自分の嫌なとこ、どんどん出てっちゃうから。泣いていっぱい出しちゃいな。怒っててもね、何も変わらないでしょ。怒っててもね、つらいだけ。泣いたらね、泣いた分だけ楽になるから。そう、上手だね。よしよし、よしよし。そう、上手だよ。エライエライ。」
背中をさすって、ずっとさすって、トントンして。
娘は腕の中で、泣きながら小さく頷いていた。
「楽になったでしょう。」
「うん。」
今日は演技じゃなかった。 自然に抱きしめることができた。 母という役と、自分とが、ほんの一瞬だけど重なったような気がした。
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