Love Letters
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2003年02月10日(月) 初めて抱かれた夜

 
 あなたに初めて抱かれた夜。



 あなたは決して

 強引に

 私を

 自分のものにしようとはしなかったね。



 あなたと話をするのが楽しくて、

 あなたのことを少しずつ知っていくのが新鮮で、

 もう、しばらく

 友達でいてもいいな。と思っていた私。



 綺麗なシティホテルのお部屋で、

 私たちはキスするわけでも

 抱き合うわけでもなく、

 TVを見ながらおしゃべりをしていた。

 触れ合わなくても、

 一緒にいるだけで、こんなに心地いい。

 見つめあったり、微笑みあったりするだけで、

 温かい時間が流れていく。



 熱いシャワーを浴びながら、想った。

 今夜、私はこのひとに抱かれるのだろうか…と。

 足元に消えていく白いシャボンを

 ぼんやり見つめながら、

 全く異なる2つの未来予想図を

 脳裏に浮かべる。


 
 ひとつは、

 あなたと共に居る穏やかで幸せな未来。

 現在の悲しみから抜け出せるという一縷の望み。



 もうひとつは、

 ひどく悲しい未来。

 別離の予感に絶えず怯えながらの恋。

 現在の悲しみに新しい悲しみが上塗りされていく。



 どちらか1つをチョイスすることは出来ない。

 この恋を自ら選ぶということは、

 どちらの未来も

 受け入れなければならないということ。



 淡いピンクのキャミソールを着けて
 
 バスルームを出ると、

 あなたはベッドに寝転んで目を閉じていた。

 待ちくたびれて、寝ちゃったのかな。

 子供みたいに無防備な顔が可愛くて、

 ひとり、くすっと笑ってしまう。



 ドレッサーの前で濡れた髪を梳く私に、

 背後からあなたが呼ぶ。


 「こっちにおいで。小夜子。」


 いつもと何も変わらない声。

 もう何度も聞いている

 私の耳に馴染んだ声。

 穏やかで優しい

 私の好きな声。



 「イヤ…(笑)」

 可愛いあなたをちょっぴり困らせたくなる。



 「いいから、こっちにおいで。小夜子。」

 もう一度、諭すようにあなたが言う。



 あなたの相変わらずの穏やかな声に

 どきっとする。

 私は、しがらみから解かれ、

 ただの女になる。



 私はこの瞬間をずっとずっと待ち望んでいたのだろうか。



 振り返って、あなたを見つめる。

 いつもと変わらない優しい眼差し。

 私を見つめるこの眼差しは、

 きっとこれからも変わらない。



 私は、理由もなく

 そう確信して、



 ご主人様に呼ばれた子猫のように、

 するすると

 あなたの胸の中に

 滑りこんだ。



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小夜子

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