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文庫化のこと
2013年02月22日(金)

ちょっと先走ったお知らせになってしまうのですが、
3月8日に、『お父さん大好き』という文庫本が、文藝春秋から出ます。

それで、お間違えのないように、と添えたいのが、
これは、単行本『手』を改題したもので、
同じく、「手」「笑うお姫さま」「わけもなく走りたくなる」「お父さん大好き」の四編の小説を収録し、
内容は変わりません。
(文章の手直しはしました)。
新刊として楽しみにしてくださるような奇特な方がもしかしたらいらっしゃるかもしれない、そしたら悪いな、と思います。ごめんなさい。

文庫化で題名を変更、というのは、
私は、単行本『ここに消えない会話がある』→文庫『「『ジューシー』ってなんですか?」』のときも行いまして、
これは確かに、読者を混乱させてしまってよくない面もあるのですが、
やはり、とにかくより良い作品に仕上げていくことの方が大事に思えるので、自分が「この題名の方がいい」と思えるものが浮かんだら、そう変えていきたいと思っています。
直しというのは、
その作品らしさをさらに研ぎ澄ませる、というもので、
過去に書いたものを否定したいわけでは、まったくないです。
若書きの面白さは残したいです。
書いたのは自分なので、自分が一番、当時の作品の書き方を覚えているわけで、その「らしさ」を活かした直しは、今の自分は上手くできると思っています。
ただ、たとえば、単行本出版後、リアクションが返ってくると、「誤解されてしまったなあ」「もうちょっとこうした方が、上手く手にとってもらえたのかなあ」と思うことが、正直ありまして、
「らしさ」をより上手く出すことが、数年後の方ができることがあるわけです。


今回の文庫『お父さん大好き』は、本文の直しは、削ったり足したりは多くはやりませんでしたが、
たとえば、『この世は二人組ではできあがらない』は、雑誌掲載時から、単行本のときも大きな改稿をし、文庫化でもかなり変えました。
帯も変えました。
文庫を出版後のリアクションを感じ、自分としては、そうしたことで、より読者にブレのない読書を提供できたように感じています。
(たとえば、「もともとこういうことを書きたくて書いたのに、余計なことを書き加えてしまったせいで、その余計な部分がメインと受け取られてしまったようだ。思い切って全部カットして、もともと書きたかった箇所がメインに読めるように浮き上がらせたい」とか、「余計なとっかかりを作ってしまったせいで読者がつまずいてしまうようだから、無駄に気にさせるような表現は削除したい」とか、そういうことを思うわけです。簡単に言うと、「恋愛っぽさ」ではなくて、「日常における社会性」「時代を描く」ということを、当時の自分もそう言っていたはずなのに、読み返してみると確かに恋愛っぽさの文章が多かったので、これでは誤解されるのも仕方がないな、と。それで大幅カットし、書き加えました)。

私はたぶん、直しがすごく多い書き手なのだろう、という気がします。
(それでも、雑誌掲載の前も、何度も印刷して直してから出版社に送り、ゲラでもチェックしているのですが……)。

でも、これは自己満足の部分もあり、他の人が読んだら、
「単行本と文庫の違い、全然わからなかった」くらいのことだろうとも思います。
「読点をどこに打つか」とか、「これは重複だから削れるな」とか、そういう、木を見て森を見ず、というような細かい直しに時間をかけていることもあり、全体像を変えるのが下手というところもあります。
これは単純に、私が細かい作業を好きなだけなのだろうな、と思います。




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