小説を書くことは、言葉だけで作るという「枠」の中で進める仕事だ。 白い紙の上の、黒いインクのしみのみ。 書いているとき、ヴィジュアルイメージは一切、頭の中にない。 だが、小説を届けるときは、言葉だけではなかなか手に取ってもらえない。 どのリアル書店、ネット通販でも同じだと思うが、ヴィジュアルが大きな力を持つ。 小説が持っている唯一のヴィジュアルは装丁だ。 これを、できるだけたくさんの人に見ていただきたいし、 紙の質感や、環境の中に置かれた商品、どのように読書を進めるかのイメージをリアルに感じられるヴィジュアルを作れたら、と思っていた。 それで、サイトの、今月のおすすめのコーナーで、 書籍の「雰囲気」をヴィジュアルにできたことがとても嬉しい。 インターネットの書影は、紙を想定して練られたたデザインを、 正面からののっぺりとした画像として扱い、画面に押し出す、というもので、 ちょっとどうなのか、と私は常々思っていた。 それでも、自分でもそれ以外の方法はなかなか思いつかず、 このページでもそうやって紹介してきてしまった。 これからはもっと考えたいと思う。 あと、本というのは、すぐに価値がなくなる商品ではないのに、 昔の本は、売る努力ができなくなる、ということが辛かったのだが、 このように「フェア」をすることはできる。 きっと、いろいろな方法がある。 もっと、新しいやり方を模索していきたい。
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