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[2005年11月27日(日)] 天井裏より愛を込めて 第九話


 俺、国寺 真。幽霊になってからのほうが人生大変なんだと思い知らされました。

 誰か、平穏を俺にくれ。









天井裏より愛を込めて
 第九話「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃぁぁぁん。…………って呼んでねぇし」









「つれないのねぇん」

「どこに向かって話し掛けている?」

「やっぱり頭の中に色々沸いているんですの」

「ていうか描写が面倒くさいからって、口調で無理やり誰が話してるのか分からせるって力技、そろそろ限界だと思う」

 分かっているとは思うが上から、悪魔、死神、巫女、俺の順だ。念のため。

 それと中々巫女は毒舌家らしいことが判明。

「それはともかく、真ちゃんの魂は貰っていくわねぇん」

 俺、貰われるの決定らしいです。でもまぁ、成仏させられたり、刈り取られるよりはマシかなぁ。

「ちなみに貰っていったらどうするんですの?」

「もちろぉん、美味しく戴いちゃうわぁん」

 はぁはぁ。お、俺、なんか美味しく戴かれちゃうらしいです。ちょっと胸がどきどき言ってます。

「どのように食すのだ?」

「もちろぉん、頭からばりばりもしゃもしゃ、よぉん」

 はぁはぁ。お、俺、なんか頭からばりばりもしゃもしゃ、美味しく戴かれちゃうらしいです。ちょっと心臓がどっきんどっきん言ってます。

「カ、カニバリズム、イヤー!!」

 食われるんか!? 俺は食われてしまうんかっ!?

「えぇん。魂っておいしいのにぃん」

 指を咥えて、物欲しそうにこちらを見る悪魔。

 その視線にふらふら近寄りたくなってしまうのは男の性(さが)か、悪魔が魅了の瞳を持っているからか。

「あらぁん。真ちゃんは私にめろめろなのねん」

「いや、それは貧乏神みたいでヤだ」

 今のネタは最近の若い人に通じるのだろうか。いや大丈夫。俺は若い。まだいける。まだまだいける!

「急にぶつぶつと国寺真はどうしたのであろうな」

「きっと自分にマインドセットしてるんですの。邪魔しちゃ可哀想ですの」

「そうだな。温かく見守ってやることにしよう」

 なにやらこちらに聞こえる声でひそひそと言葉を交わす、死神と巫女。なんか一昨日さっきから随分と仲がよさげですね。そのうちCD

デビューですか? 死神&巫女。うん。デュオでデビューしたらバカ売れ間違いなしです、多分。おっきなお友達とか、その辺の世代に。

「その中に私は入っていないのぉん?」

 トリオか? でもそれだとイモ欽トリオとかと被るしなぁ。

「随分と古いところと引き合いに出すのねぇん」

「ていうか、人の思考を勝手に読まないでください」

 プライバシーの侵害ですよ。個人情報保護法ですよ。スキャニングですか? 銀行口座から勝手にお金、抜き出されちゃいますか? 口座の残

金はいつも三桁なので無問題ですよ?

「もう死んでるからお金なんて考える必要ないんじゃないんですの?」

「しかし三笠清凪、三途の川を渡るのに六文銭は必要であろう?」

「あなた、宗派が違いでしょうぅん?」

「ってお前等みんなテレパシストかよ!!」

 なんてこったい!? これじゃ隠し事なんてできないじゃないっ!!

「いや、すべて国寺真の口から垂れ流された汚物のようなものだ」

「そうですの。その(ピー)のような口から(ピー)を垂れ流す前にサーをつけろ! ですの」

「Sir! Yes,Sir! ってどこの軍隊ですかっ!? ていうかその伏字は何っ!?」

「清純な私には似合わない言葉ですの」

「どの口でそれを言うか」

 俺の言葉に呼応して、うなずく悪魔と死神。

「ひ、ひどいですの!? 私は国寺さんと同じく色モノキャラですの!?」

「何気にひどい言われようだが、いいか、巫女よ」

 俺は真顔で巫女に話し掛ける。

「この小説に、色モノキャラでない人物など存在するか?」

 俺の言葉に右を見て、左を見て、最後に正面の俺を見る巫女。

「いないですの。これでもかってぐらい完璧に存在しませんの」

 そのままがっくりと膝を付き、肩を落とす。

「いいんだ。そうやって自分を理解して、はじめて人間は成長できる。君はまた成長したんだ」

 巫女に優しく声をかけてやる。そんな俺を、巫女は瞳を潤ませながら見上げる。

「なんだかちょっと虚しい成長ですの。それでも、なんだか生まれ変わった気がしますの。例えるなら、そう、三笠清凪マーク2、ですの」

「どの辺りがマーク2かは聞かないとして、よく痛みに耐えて頑張った。明日のキング・オブ・巫女はお前のものだ!!」

「はいですの、コーチ!!」

 多分どっかに出ている巫女の星を指差し、俺は力強く頷いた。

「え〜っと、お取り込みの最中に悪いんだけどぉん」

「なんだ、色モノマーク4?」

 これから夕日に向かって走り出してスタッフロールだというのに、後ろからマーク4が声をかけてきた。

「そろそろ、殺(や)っちゃってもいい?」

 なぜだかすごくお怒りのご様子。隣のマーク3も同様にだ。Why?

「色モノか。そうか、我も色モノなのか」

 どうやらその辺りがご立腹の大元らしい。

「覚悟はできているわねぇん」

「国寺真よ、最後に言い残すことはあるか?」

「往生しろ! ですの」

 ま、マーク2よ! お前はこっちだろうっ!? くっ、人類の歴史は裏切りの歴史だというのは本当のことだったのかっ!?

「えーっと、その、みんな、ちゃんと濃いと思うよ?」

 言葉を言い終わる前に、衝撃。俺の意識は刈り取られた。



 ……本当のこと、言ったのに。









 次回予告。



 否定の言葉を重ねれば重ねるほど、その事実を塗り固めていることに人は気が付かない。

 その事実を肯定するよりも確実に、その否定は肯定へと変わる。



天井裏より愛を込めて
 第十話「だ〜か〜ら〜! 俺はロリコンはねぇって!!」





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