くだらないことを書くノートHOME】【MAIL

[2005年11月25日(金)] 天井裏より愛を込めて  第八話

 俺、国寺 真。現在幽霊のくせに死にかけてます。

 誰か、誰か助けてくれ!!









天井裏より愛を込めて
 第八話「我が名は、我が名は、我が名は…………何がいいと思う?」









「俺に聞くなよ」

「なんだ? いきなり?」

「どうかしたんですの?」

「あーいやうん。なんでもない」

 無様で惨めで弾けるほどに命乞いに乞いまくった結果、なぜかどっかのビルの屋上で向かい合って日本茶飲んでる俺と死神。ついでに巫女。

「ていうかおまえ、どっから沸いた?」

「人をボウフラみたく言っちゃ駄目ですの」

「似たようなもんだろ?」

「ボウフラを馬鹿にしちゃ駄目ですの。彼らはどんな場所でも水溜りさえあれば繁殖しますの」

「っておまえが下かよ!?」

「国寺真よ。ボウフラ以下なのか?」

「やーいボウフラ以下ぁ、ですの」

「って俺かよ!?」

 畜生、無性に暴れだしたい心境だ。でも、俺の目の前にいるのは俺の天敵たる死神と巫女。

 祓うか斬られれば俺の人生はジエンド。もう終わってるとか言うな、頼むから。

「ところで国寺さん」

「なんだよ」

「こちらの方はどちら様ですの? 新入りの方ですの?」

「おまえ、知らないで一緒に茶を啜ってたのかよ」

「まずは相互理解を深めることこそ、恒久的世界平和の第一歩ですの」

「いきなりグローバリズム溢れてますねこん畜生」

 つーか最近の巫女は世界平和も考えないといけないのか。やるな、日本の巫女産業。

「こいつは死神らしい。なんでも名前はないらしいが」

「我輩は死神である。名前はまだない。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは……」

「いや、漱石はいいから」

 先生、最近の死神は夏目漱石をソラで言えるらしいです。すごいですね。って誰だよ、先生って。

 ていうか途中で遮られて口を尖らせてる死神が微妙にかわいく見える俺ってば末期ですか? そうですかありがとう。

「そうでしたの。これ、名刺ですの」

 そう言って例の名刺を死神に差し出す巫女。名刺を見て、三笠 清凪って名前だったことをようやく思い出した。でも誰も覚えていないから巫女でいいか。

「かたじけない。それでは我も」

 懐から紙切れを取り出す死神。紙には「死神」と大きな字で書かれている。最近の死神業界は名刺必須らしい。ていうか、あれって名刺の意味あるんだろうか?

「これはこれはご丁寧に、ですの」

「いやいやこちらこそ」

 頭を下げあう巫女と死神。違和感バリバリというか、宗教無視しまくりというか。まぁ、クリスマスや正月を同等のものぐらいにしか見ていない日本ならではの光景と思っておこうそうしよう。

「んじゃ、俺はこの辺で……」

 場の空気が和んできたのでさっそく抜け出すことにした。ここにずっと留まっていたら、命がいくつあっても足りはしないだろう。いや、もう死んでるってのは無しの方向で。

「どこに行かれるんですの?」

「我の用事はまだ済んでおらん」

 はい、逃げれませんでした。ていうか危険度が300%でメーター振り切れちゃってますけど?

 こちらに向かってにこやかに笑いかける死神と巫女。死神巫女ってちょっと萌えとか思うのは俺だけですか。

 恐怖のあまりちょっと現実逃避してる俺を尻目に、にじり寄ってくる死神と巫女。

 パパン。どうやら今日が俺の第二の命日らしいです。先立つ不幸をお許しください。ってだから俺はもう死んでるんだって。つーか初七日さえもまだなのに俺の魂、成仏するっぽいですよ?

 そのとき、互いに俺ににじり寄ってるのに気がついたのか、死神と巫女が顔を見合す。

「あなたも国寺さんを成仏されるのが目的なんですの?」

「違う。我はかの魂を刈り取り、冥界に送るのが役目だ」

「国寺さんの魂が必要なんですの?」

「そういうことになる」

 バチバチと目から火花を散らす死神と巫女。なんか、予想外の方向に話が向かってる気がする。つーかチャンスですか? やっぱり人間バンジー塞翁がUMA? いや訳わからんし。

「じゃあ貴方は敵なんですのね」

「敵? それならば我も汝を敵と認めよう」

 じゃきん、と背中から大鎌を取り出す死神。やっぱりあの構造はすごく気になる。ひょっとして異次元に通じてたりしますか?

「望むところですの」

 袖の中から数珠を取り出す巫女。つーか数珠って仏教だよな? 巫女なら玉串使えっての。

 ってそんなことはさておき、十中八苦逃げるに如かず、と昔の人もおっしゃった。うん、せんきゅー先達。あなた方の死は無駄には致しません。安心して天国から俺の活躍を見守っていてください。

「では」

「先に国寺真の魂を捕らえたほうが勝ち、ということで」

「決まり、ですの」

 互いに得物を構え、こちらに向き直る二人。つーか風向き変わってませんか? なんていうか全力向かい風? 風速60m以上。家屋の倒壊の危険あり、ですか?

 あれですか? 風前の灯ってことですか? ちくしょー! 絶対に日本広告機構に訴えてやるっー!! みんな死にやがれっ!!

「おとなしくなさい、ですの」

「抵抗は為にならんぞ」

「おたすけー!!」

「駄目よぉん。か弱い魂を寄って集っていじめるなんてぇん」

 逃げ惑う俺に天の声が聞こえてきた。って違う。俺たちの頭上から誰かが声を掛けてきたのだ。

 空を仰ぎ見ると、そこにはへんてこな女がいた。

 頭にはぐるぐると巻いた角。背中には蝙蝠羽。なんかすっげぇ露出度の高い服。もうあれです。あれだって全身声高々に叫びまくってるようなものです。

「へ、変態さんだ」

「露出狂、ですの」

「まぁ、暖かくなってきたしな。そういう気分なのだろう」

「失礼ねぇん。見れば分かるでしょう。私は悪魔よ、ア、ク、マ」

 俺たちの生暖かい視線に気分を害したのか、暖かくなって出てきた露出狂の変態さんはそう宣(のたま)った。

 えーっと、自称が自称でないとするならば、だ。



 ……ひょっとして、また増えちゃいましたか?









 次回予告

「と、いうわけで、遥か魔界より真ちゃんの魂をゲットするためにやってきましたぁん」

「増えたよ、増えちゃったよ。案の定また増えたよ。俺の平穏無事な死後ライフを返してくれこんちくしょう……」

「国寺さん。部屋の隅で膝を抱えられてどうしましたの?」

「三笠清凪、そっとしておいてやれ。国寺真は人生について深く苦悩しているのだ、おそらくは」

「あらぁん。じゃあ私が慰めてあげるわぁん」

「寄るな暖かくなって出てきた露出狂の変態」

「しつこいわねぇん。悪魔だって言ってるでしょうぅん」



天井裏より愛を込めて
 第九話「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃぁぁぁん。…………って呼んでねぇし」























悪魔娘の外見はディアー○、もしくは○ルデリーズ、性格は妲○ちゃんでよろしく。(やっぱり分かる人だけ(ry





BACK NEXT 初日から日付順 最新 目次