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- [2005年11月16日(水)] 天井裏より愛を込めて 第三話
俺、国寺 真。幽霊一年生。
現在、自分の葬式の見物をしています。
天井裏より愛を込めて
第三話「『ヒゲとボイン』とデブとメガネ 前編」
我が葬式ながら湿っぽいなぁ、と他人事のように眺める俺。生前の俺の友好を現して華がないのが泣きたくなる。
親父が焼香している俺の友人や会社の同僚、一人一人に頭を下げている。
お袋が死んでから男手一つで俺を育ててくれたその広い背中が、今は酷く小さく見える。
じくりと胸が痛む。
今まで死んだことに実感がわかなかった俺だが、今の親父の姿を見ていると深く痛感する。
「もっと親孝行しておけばよかったなぁ」
後の祭り、とはまさにこのことであろう。
「真君っ! 何で僕を残して死んじゃったのかなぁ!?」
参列者の一人が俺の棺にしがみついて何かわめいている。見た瞬間、激しく後悔した。ていうか、これが女性ならば死んだ甲斐があったってものだが、野郎では俺が報われない。しかも、いかにもなオタクであればなおさらだ。
小野崎 和夫。それが俺の棺にしがみついてる馬鹿の名前だ。一言で言い表すならば……。うん、オタクしかない。
伸び放題の髪の毛は、しらみが湧きそうなほど。脂でテカった顔。服の上からでも分かる贅肉。ビン底みたいな黒淵メガネ。
デブでメガネ。タイトルに偽りありだな。
「あのっ、朝まで語り明かしたのは嘘だったのかなぁっ!!」
いつの話だよ? ていうか、そこまで俺と仲良かったのか、お前は?
ああ、数少ない同級生の女性陣もドン引きだよ。
「うわぁ、国寺君って……」
「女っ気がないと思ってたら……」
「これはコミケのいいネタになるわね……」
あああ! なんか事実無根の不穏な噂が流れてるし! っていうか死人に鞭打つような真似をすなっ! あと腐女子は帰れ!!
「知ってるか? 国寺ってアイ○助けて死んだんだってよ」
「うわ、最悪」
「え? あれ嘘じゃなかったの?」
「実はアイ○の飼い主、俺のばあちゃんだったんだ」
世間って狭いなぁ。なんかもう、殺してくれって感じです。もう死んでるけど。
門の辺りが突如騒がしくなる。何事か、とそちらを向いた瞬間、人垣を割ってひとりの女性が姿を現す。
それが彼女のはじめての対面であり、すべての事柄のはじまりでもあるのだが、そのときの俺には知る由もないのであった。
つづく
……正直、ごめんなさい