Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2018年04月13日(金) |
Mu'u / Todd Neufeld 自分読み |
『Mu'u / Todd Neufeld』 Ruweh 005
2012年ブルーノート東京へ6年ぶりの凱旋公演をする菊地雅章が連れてきたのは、まだ録音物がリリースされていないTPTトリオ(Thomas Morgan, Poo, Todd Neufeld)だった、・・・いまだに彼らの音源はリリースされていないのは大問題だ、わけだが2日間4ステージのすべてを体感する構えでいたわたしは最初のセットで演奏の極度の集中力と強さと可能性に打たれ、脳が震え体温が低下してしまいリタイアしている、そんな体験は後にも先にもないぞな、
マーク・ラパポートさんが先月Face Bookに投稿していた、 Guitarist Todd Neufeld can whisper as assertively as he can wail. His long-awaited debut album is a riveting listen. 「晩年の菊地雅章が非常に高く評価し、自らのトリオに迎えたギターリスト、トッド・ニューフェルドが遂に初リーダー作をリリースする。メンツはトーマス・モーガン、タイショーン・ソーリー、蓮見令麻、そして何とビリー・ミンツ(タイショーンとのツイン・ドラムスもあり!)。少ない音数と魅惑の音色で自己主張するニューフェルドには、まるで墨絵の名手のような渋みを感じる。」
言うまでもなく90年代以降の現代ジャズシーンの可能性を読者に示唆し続けていたミュージックマガジン誌コラム「じゃずじゃ」をむさぼるように読んでいたわたしのようなラパポート・チルドレンは多い、ディスクユニオンの輸入盤コーナーにはたくさんいる。
早くも9月7日付のAll About Jazzに興味深いインタビュー記事が掲載された、
『Todd Neufeld: Transcending The Limits Of Sound サウンドの限界を超えて』 https://www.allaboutjazz.com/todd-neufeld-transcending-the-limits-of-sound-todd-neufeld-by-jakob-baekgaard.php?page=1&width=1920
記事にはトッド・ニューフェルドのディスコグラフィーが載っていて重要作を拾ってみるに、
Todd Neufeld: Mu’U (Ruweh Records, 2017) Vitor Goncalves Quartet: Vitor Goncalves Quartet (Sunnyside Records, 2016) Raphael Malfliet: Noumenon (Ruweh Records, 2016) ★ Flin VanHemmen: Drums of Days (Neither/Nor Records, 2016) ★ Rema Hasumi: UTAZATA (Ruweh Records, 2015) Tyshawn Sorey: OBLIQUE I (Pi Recordings, 2011) Tyshawn Sorey: KOAN (482 Music, 2009)
わたしはジャズ批評・益子博之の耳のアンテナの鋭さをアーカイブするイベント『四谷音盤茶会』を7年ほど続けていて、昨年2016年の年間ベストを音楽サイトmusicircusに掲げているが、 http://musicircus.on.coocan.jp/main/2016_10/tx_3.htm トッド・ニューフェルド★とタイションでベスト3を独占していることだ、改めて驚いていると書くとわざとらしいが3歩歩くと駐車場の位置を忘れてしまう老人運転手であるわたしには自然だ、
じつを言うと、2012年TPTトリオで体温低下をして以来、ジャズというジャンルの新譜や記事や広告雑誌が把握できなくなっている、のだ、それまで Jazz / Improv としてきた脳内が improvised jazz と統合されたパラダイムシフトによって感覚が変容したのであろうか、モチアンとプーさんがいなくなってからどうもなあチャーリーパーカーでさえ引き出しフレーズ連射にしか聴こえなくなってねえサウンドの風景はちっともインプロしてないじゃないかと与太をかますばかりになっている、
この春には蓮見令麻『Billows of Blue』をレビュー、「私たちは日々、生まれ、死んでいる、気付かずに老いていれるか、ピアノの革命が蓮見令麻によってなされていた、」とぶち上げて、ずっとこればかり聴いている、ほかのものが聴けない、
『Mu'u / Todd Neufeld』 Ruweh 005
蛇頭東京医学部稲岡病院長からキミも年間ベストを出さないかねとお声がかかりすかさず「御意!」、師匠の岸部一徳の歩くスタイルに魅了されましたが彼が1972年ミュージックライフ人気投票でベーシスト部門で1位(2位加部正義、3位山内テツ)だったことを音楽ファンは思い出すのです、
リスニングルームからダンスフロアへのジャズの地勢を最初に指摘したのは天才菊地成孔ですが、わたしは引きこもりのままなのです、タワレコの冊子に全パーソネルをテキスト出稿して10万円をいただいたことを契機に、スティーヴ・ジョブスに傾倒する編集者に全ECMカタログを作らないかと言われても、WIRED編集長にECMディスコグラフィーを作らないかと言われてもおのれの力不足でかなわず、現在進行中のECMカタログからも途中降板をしたまま、ここで今年のベストを挙げるとするならば、ダヴィ・ヴィレージェスかコミタス作品集をECMレーベルから選ぶのがあるべき態度だと思っております、
ECMレーベルが70年代フュージョンのいち形式だったとも納得いたしますが、ヨン・クリステンセンやジャック・ディジョネット、ポール・モチアンが彩った打音のフィールそれぞれのうち、モチアンのタイムキーピングのあり様に注目していて、それは演奏を重層化、レイヤー構造をもたらす次なるパラダイムを示していたと思います、(わたしたちがモダンジャズを野球の現代ジャズをサッカーの快楽に喩える部分)、
とはいえここからここまでが新しいパラダイムだとか言うモンダイでもなくって、とにかく耳の鳥肌が立つような演奏音盤を聴かせてもらいたくて年4回批評家益子博之との「四谷音盤茶会」を開催し続けています、わたしが音楽に求めるものは「謎」です、
Mu'u / Todd Neufeld
Jazz Tokyo レヴュー http://jazztokyo.org/reviews/post-20436/
わたしたちの耳には、彼らの音楽にはマネリ父子やポール・モチアンといった天体とも重なって見えている、これらの図式をアルバムジャケを配置して経歴や音楽用語や形容詞でもって説明するわけにはゆかない、名指すことのできない謎に打たれて、最先端の宇宙理論を求めて観測している真っ最中なのだ、まるでバンプ・オブ・チキンの歌詞なのだが、
耳はいつも独りぼっちだが、孤独ではない、つかもうとしてつかみきれない哀しみを抱えて、ぼくらは走る、
生命の息吹き、
蓮見令麻ちゃんの赤ちゃん誕生とこの音楽は相応しいと想っている、2017年、小沢健二と Sekai No Owari の「フクロウの声が聞こえる」にも赤ちゃんの誕生が響いている(テルミンのサウンドに、とオレは勝手に思っている)、同期、
Flin van Hemmen 『Drums of Days』 といい、蓮見令麻が主宰するレーベルRUWEH RECORDSといい、創造が息吹くかけがいのない時期を聴く者に体験させてくれている、それはレーベル特集とか現代ジャズシーンとかの編集スコープでは掬えない存在感で、それをうまく伝えることができないでいる、
(多田雅範)
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