Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
DiaryINDEXpastwill


2014年06月07日(土) 岡田暁生 古谷利裕





3択。この中でいちばんマシなのはどれ?くらいかなあ。

岡田暁生は耳いいね。だいたいクラシック上がりのひとのジャズ記述はハズレが多いけれど、1960年生まれ、世代もいいのかも、若い頃にあった視野というか耳の環境は大きいと思う。チャーリー・パーカーが練習と研究の鬼だった、やっぱそうだよねー。

なんだお、せっかく対話相手のストレンジ教授がクレイグ・テイボーン『チャンツ』ECMを取り上げているのに(!)、気付かないのか岡田!

ストレンジ教授はボボ・ステンソン、アンダーシュ・ヤーミンを評価したり、ホランドやピーコックまで言及しているけれど、そこを岡田は感じていないというか、コードとか対位法とかの複雑性に重きを置いているから聴こえていないものは全く聴こえていないのではないか。

コードで語るなら柴田南雄や山下邦彦、菊地成孔には敵わないのだろうし、ジャズに関してはストレンジ教授のほうが生涯逆転できないくらい格上だ(だからこそ対話でご教示いただいているのが本書かー)。

アルテスで片山杜秀と岡田暁生の吉田秀和追悼対談読んだけれど、この二人が今のところ権威に一番近いのだろう。片山さんの三善晃連載も、ありがたいしよく知っているとは思うけれど、なんだかなあ、一般誌であの芸風かなあ。

でも岡田さんの佐村河内事件に対する見解、“「交響曲第1番」は、傑作ではないけれど、悪くない曲だと思う”、まさにそう。おれは、いい曲だと思う。いまでもいいオケで、コンサートホールで全身で聴いてみたいと思うもの。

いずれにしても、アート・テイタムがそんなにすごいとは今まで知らなかった。

聴いてみよー。


All The Things You Are (1953) by Art Tatum


楽譜的にはすごいのだけど、ジャズとしてはこんなの当たり前すぎて退屈だ。


これならハイドンの弦楽四重奏曲聴いたほうがいいや。

山下邦彦が、ビートルズ、キース・ジャレット、ユーミン、坂本龍一、小室哲哉、ミスター・チルドレンへと分析を進め、次は菊地雅章である(未刊行)、このライン。

わたしはクラシックよりもジャズ、ジャズよりもビートルズ、ビートルズよりもインプロ、インプロよりもミスチル、ミスチルよりも菊地雅章や現代ジャズやフィーレコ、と、基本的にあとから出てきたジャンルの優越を感じる。

ジャズを、クラシックを、インプロを、「わかりたい」と思念した時点で負けなのだよ、若人よ。

残忍に聴け。獰猛に聴け。そこに道ができる。アントニオ猪木か!


古谷利裕の序文がいい。

『ある作品を観てそこから決定的な「何か」を感じてしまったとする。その時に感じられた「何か」を、その作品の物理的な組成や仕掛けられた仕組み(構造)にすべて還元することはできないだろう。構造に還元し切れないものこそが、その作品独自の質であり、オーラである。
(中略)
私の感じる「何か」がたんに私の内部に由来するのではなく、外側にある世界に対応するものだということを示すのは実は簡単なのかもしれない。それは私が生命を維持することができている事実によって証明される。私は私の感覚によって生命を維持するのに必要な情報を得て、危険を察知してそれを避ける。もし私の感じる「何か」が恣意的なもの(幻)に過ぎなかったとしたら、私は生きている状態を維持することが出来なくなってしまう。』


スティーブ・ジャンセン、デヴィッド・シルヴィアン。




















Niseko-Rossy Pi-Pikoe |編集CDR寒山拾得交換会musicircus

My追加