Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2012年04月19日(木) |
「正弦波が描き出してしまう〈風景〉」耳の枠はずし 福島恵一 |
「Zero Plus Zero / Lucio Capece」(Potlatch) 2012 について、「これまでの評価軸では測れないで、気持ちいいとしか今日は言えない」■と書いていたら、音楽批評界のドカベン、耳の熊楠、福島恵一(と呼び捨てにしてしまうファンモードのわたくし)が、別枠レビューで取り上げて下さった!(なんでドカベンなんだ?深夜TVでAKBが話してた)
「正弦波が描き出してしまう〈風景〉−Lucio Capece『zero plus zero』を聴く Sinewaves End Up Drawing "Soundscapes" - Listening to Lucio Capece / zero plus zero」 耳の枠はずし 福島恵一 ■
20代の頃からジャズ批評誌を福島恵一のレビューだけのために買い、レビューを読まずに盤を購入し、自分なりに聴いてからレビュー文に目を通す、という、耳の千本ノック状態であこがれを持って歩んだわたしには(ECMファンには同じことをしていたひとたくさんいた)、談志師匠の前の談春みたいなおののきもあるが(昨日『赤めだか』読んでたのです)、ううう、し、師匠、おれの耳は二ツ目になれるでしょうか、「無理だな、おめーは何も書けてないだろ!」、談志ならそう言うだろうなあ。
わたしは本盤を人間が演奏しているという枠組みを離れて、風景のように、自然現象のように聴いていた。レーベルやジャンルの先入観が取れて聴けてしまうちからがある。
「【補論】正弦波音に押し付けられる象徴的意味合い(oneness / unity)について」が、佐々木敦の記述に対する痛烈な批判になっているのも見逃せない。
わたしはヘッズのオーヴァルとミクロストーリアとマウスオンマーズのライブに渋谷へ行って耳の中が正弦波になったことはあるが、佐々木敦のこの本は読んだことがない。サイン波はONJQのファーストで、バンドを異化する雰囲気作りに貢献しているのに喜んだり、コンサート会場で首を左右に振ると違うふうに聴こえて喜んだことはあるが、雅楽の笙で充分だろという誤った捉えかたしかしていない。
本盤のトラック5は他のトラックの説明付けというか、等高線をひいている位置あんばいで心地よく身をゆだねて、実際サイン波だとも思わない風情であったから、福島さんの表題に正弦波とあるまで気付かない有様だった。ちなみにCDジャケに掲載されている楽器クレジットを、今の今まで見ていないのだ。わかったら今の聴取の快楽は逃げてしまう気がして。そのくせ、ジャケのデザインのかたちや色彩にうっとり魅入っているのは・・・。
こないだ益子博之に教えてもらった森本恭正『西洋音楽論-クラシックに狂気を聴け』(光文社新書) 帯文句「西洋音楽の本質はアフタービート。こんなシンプルな事実を今まで誰も教えてくれなかったのは何故?音楽にとどまらない斬新で挑発的な文化論!!」(生物学者・福岡伸一氏) おおお、日本の音楽は風景なのだ、自我ではないのだ。 わはは、ヨーロッパのジャズがジャズっぽくねー理由もそんなとこかー。 と、独り盛り上がって読んでいる。
インプロから響きへ、ディストピアアンビエントへの快楽の移動は、日本文化を目指してもいるのではないか。それが橋爪亮督がNYに行かなかった理由にもつながるのではないか。
ああいけないいつもの妄想もーどだわ。
とにかく!「ぞぞけがたった」のだ。「ぞぞけがたつ」という日本語は無いのだそうだ。しかし、わたしが音楽を聴いてざわざわとも呆気にとられるとも身動きできないとも、を、総称して「ぞぞけがたつ」と、おれは日本語のためにしゃべっているのではない、おれはそう言うのだー
Face Bookで、こないだ本盤と舞楽盤をやってきた長男とのやりとり。 「Lucio Capece's Zero Plus Zero がall about jazz でレビュー■されてて、動画がありました。このところ毎日このCD聴いています。おいけいま、聴いてるか?」(「Lucio Capece-Soprano sax and preparations- 2006 - Part 2」■) 「聴いてるよー!ジョージ・アンタイルとかフェルナン・レジェが活躍していた頃の音楽に近いものがあると感じたけど、結局これとアンビエントの違いがよくわからん。結局意図の有無なの?」 「す、すまん、それ、わからん!え?アンビエントなの???おれはタイトルトラックの2曲目にはまっておる。」 「いや、全然感覚だけで話してるけど笑、アンビエントという表現はまずかったかも。漠然と聞いた感じ、最初期の現代音楽との違いがあんまり分からないような印象が。」 「そうそう!わからないってのがいいだろー。お、音楽批評福島恵一さんが、この盤を特別枠で論じて下さってるぞ。父の言葉だと思って心して読まれい。」
とまあ、いつものように要領の得ない日記だ。
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