Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2008年03月30日(日) 『Map  Jean-Luc Guionnet / Toshimaru Nakamura』 (Potlatch 108)2008




『Map
Jean-Luc Guionnet / Toshimaru Nakamura』 (Potlatch 108)2008

#1 (18:38) l #2 (12:51) l #3 (16:03) l #4 (23:16)

Jean-Luc Guionnet alto saxophone and church organ (on #4)
Toshimaru Nakamura no input mixing board

Recorded on march 17th, 2007 at Montreuil (France) and on july 20th, 2007 at la Collégiale Sainte-Croix, Parthenay.

さすがポトラッチ(レーベル)。血が吹き出ている。
エクスペリメンタル・ミュージックという界隈が従来の即興を侵食した契機に、即興の断層があった。従来の即興、というのはベイリー、パーカーらの英国即興第一世代との連続性において意識され、彼らの生存の視線に維持したように考える。一度は殺して父の遺志を継ぐような関係だったか、高柳昌行と大友良英。オフサイト系の演奏の登場・・・。
まいいや。
2月に札幌のATTICと北海道大学クラーク会館で打楽器奏者村山政二朗とのデュオ公演を行ったフランスの異才ジャン=リュック・ギオネ、と、ノーインプット・ミキシング・ボード奏者中村としまるとのデュオ、が、ポトラッチからリリースされた。
ギネオのアルト・サックスもいいが、パイプ・オルガン(!)の異化効果が凄い(面白い、というのではなく・・・)。中村としまるも激しい。ミキシング・ボードを意味深に鳴らしてて何が楽しいんだ、いつまでじっとしてんだ、それって何なんだよ、松尾芭蕉か、なんて以前は思っていたおれ。
おれ、ノイズも聴く。一時期は毎日新譜が出ているメルツバウ完全コレクターになりたかった群馬県民だった15年まえ。
フランスのポトラッチというレーベルはリリースこそ少ないがベイリー、ヴァン・ホフ、ラズロ、ドネダなどのコアな即興演奏家の、それも代表作水準の作品を提出し続けている。2001年のクレブス、ノイマンらの『Phosphor』もここからリリースされていた。
エクスペリメンタル系とか弱音系とかに広いレーベルだと、「演奏力もないくせに!」と思うばかりな演奏にも多く出くわして、何でもいいのかアンタらはという気持ちになったり、何でもありがたいのだというリスナーの存在を感じたり。でもポトラッチには批評性を感じるなり。
それって、オールド即興ファンのひいき目か?・・・かもしれんな。いや、おれの耳が聴取経験の臨界点を越えて突然聴こえ始めたとか。なんとなれば花粉症?相違ない。同型だ。
いや、それにしてもこの盤にはシビれた。16分とか23分のトラックが4曲収録されている。即興の新しい態度といったもの、音の斬新さ、おれのようなオールド即興ファンを退屈させない血が吹き出るような展開も不意を突く、ノイズの背後にパイプオルガンが音のキャラまんまに立ち現れてお風呂でお湯をかけ流しながらおしっこをするアグネス・チャンになって今までなかったこの感じ、と。トラック4、もしかして、中村としまるはポトラッチというレーベルにせき立てられている?サービス精神旺盛過ぎるぞ。余計なお世話か。
なに、このギネオはクセナキスに師事した経歴があり、即興演奏のほかフィールド録音や非西洋圏の芸術と思想をあつかう雑誌の編集まで行っているという、66生まれの42さい。いよいよポストモダンで育った40代の表現者が続々シーンに登場しているのだろうか。


Niseko-Rossy Pi-Pikoe |編集CDR寒山拾得交換会musicircus

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