Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2007年11月19日(月) |
Parish / Thomas Strønen (ECM1870) 2004 |
(どいつがストローネン?)
はじめて聴くミュージシャンの、最初の数音でその才能に圧倒されることほど、リスナーにとって幸福なことはない。
ボボ・ステンソンを保証人にしたサックスのカルテット、ECM登場作、どーせつまんないんだろ、という程度の認識で聴き始めた。 トラック1の最初の数音で、「わ・・・。このタイコのセンスは尋常なものではない。この作品は、このタイコがキーだ。」と、ドラマーがリーダーとなっていることを知らないで聴いているわたしでした。
かねがね、ジャズ界にはポール・モチアンの後継者が存在していない事実を痛感してきた。 このトーマス・ストローネンには、ジャズ界でモチアンの存在になれる目がある。
どうもストローネン本人は鳴り物をパカパカ叩いたり反応しながら演奏を左右してゆくことが好きそうな風情ではあるけれども、ブラシさばきの具合もよいし、やはり、タイコを叩いて演奏の時間を伸び縮みさせる能力(菊地雅章が使う表現でいうところの)、これがある才能をようやくジャズ界は得ようとしていると思う。
ストローネンはノルウェー出身で、ノルウェーのドラマーというとポール・ニルセン・ラブだけじゃないようだ。自分の国にヨン・クリステンセンみたいなドラマーがいることをいやおうなく意識して育たらざるを得なかった世代である彼らは、いい抑圧を受けて世界レベルの才能を培ったと思ってみたいぞ、わたしは。
ECMへの登場作品としては、即興あり、自作のコンポジションあり、演奏のバリエーションも提示してあり、ということで満点だと思う。13曲目「イン・モーション」を聴いていると、ジャレットのヨーロピアン・カルテットを揶揄しているのと同時に越えているものを感じる(そもそも越える意義もない時代がかったハードルに過ぎないが)。
ほんとに、ストローネンは音楽が視えている稀有なドラマーである。72年生まれ、35さい。いやー、できることなら、ノルウェーにとどまることなく、今からでもニューヨークへ出て数々の才能とセッションして、21世紀のジャズをおじさんに聴かせてほしい。
なお国内盤はノルウェーのジャズやロックに詳しい矢部瑞保さんが執筆しており、ECMの国内盤で彼女が書いているものは買いであります。
それにしてもセンスのないジャケ。このようなオールドスタイルを押し付けられて大切な自分の作品を出さざるをえないミュージシャンにおれは同情する。
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