Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2007年11月18日(日) |
藤井宏樹&松下耕指揮によるJOINT CONCERT「〜三善晃の作品をあつめて〜」 |
三日月の輪郭が、冷たくなった夜空にことさらくっきりと映る夜に、三善晃の作品で構成された合唱コンサートのことを記す。
藤井宏樹&松下耕指揮によるJOINT CONCERT「〜三善晃の作品をあつめて〜」■ この日記で、もっとこのコンサートをアピールすべきでした。しばらく言葉を失うくらいに感動して帰ってきました。
>Gaia Philharmonic Choirによる 混声合唱のための 『地球へのバラード』(詩・谷川俊太郎) 1983 >うたあい による 女声合唱とピアノのための 『三つの夜想』(詩・村松英子) 1985 >国立音楽大学女声合唱団ANGELICA による 女声合唱とピアノのための 『虹とリンゴ』(詩・宗 左近) 2004 >合唱団ゆうか による 合唱組曲『五つの童画』より(詩・高田敏子) 1968 >合同演奏で 女声合唱曲「麦藁帽子」(詩・立原道造) 1963 >合同演奏で 女声とピアノのための組曲『わらべうた』より 「あきかんうた」(詩・谷川俊太郎) 1963 >合同演奏で ― ピアノのための無窮連祷による ―「生きる」(詩・谷川俊太郎) 2000 >合同演奏で 「木とともに 人とともに」(詩・谷川俊太郎) 1999
コンサートの1曲目、『地球へのバラード』は、musicircus■に紹介した「赤毛のアン」と音楽の骨格を同じくする、宮崎駿アニメの無重力感覚を先取りしていたようなナンバー。
三善晃■・・・え!吹奏楽曲で「札幌オリンピック・ファンファーレ(1972)」なんてあるのか?これを聴かずしてミヨシストを名乗れぬではないか。だれかおいらに聴かせてくれ。・・・それはさておき。
どの合唱曲も、聴いてよかった。 4つの合唱団のクオリティの高さ。 くにたちおんだいの女子大生たちは桜花賞を思わせ、合唱団ゆうかは秋の天皇賞、うたあいは秋華賞、ガイアはマイルチャンピオンシップ。 やはり古馬たちの水準の高さは別格なものだ。そしてそれぞれに感触が微妙に異なるシルクの白い布のような美しさをたたえている。 そもそも4つの合唱団がこれだけの作品をくりひろげるなど、ありえない贅沢である。 80にんを超える合同合唱団による後半、「麦藁帽子」、このスケールで響きわたること、このホールの響きのよさ。息をのむ。
2004年に初演されたという『虹とリンゴ』(詩・宗 左近)。 宗左近(そうさこん■)の詩のすごさ、を、おれは今日まで知らなかった。 レクイエム、響紋を経て、なお。この作品の清浄・・・あえて、清浄。
合唱というのは合唱曲というジャンルではなく、同じときに響きあうことを共有する、人々が生きている時間のこと。
そんな、言葉にしてしまうと恥ずかしいものだけど。 三善晃の、合唱の歴史を変えた側面をもあぶり出し、現在のコンポジションにまで触れた選曲と構成にも、この公演の成功は支えられた。 プログラムは最近の2曲に至り、三善晃の全作品がひとつの交響曲になっているようにぼくには意識させられた。この明快な飛翔、それは速度。未来の子どもたちを導くような速度。
三善晃さん本人も会場に聴きに来ていて、ぼくは席ひとつ離れた後ろ。指揮者のおふたり、合唱団のみなさん、そして立ち上がってふるえながら手をあげる三善さん、会場の拍手、伝わる祈りと感謝の空間は光を放っていた。
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