Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2007年09月06日(木) Music Today 21 「ジャン=クロード・リセ」<室内楽>〜全曲日本初演

今日の音楽 Music Today が今でもやっている、くらいの認識しかなかったのですが。
ジョン・ケージが晩年に辿り着いたミュージサーカスというコンセプト、の、最終形というよりも、最新更新版、『ユーロペラ5』(1991)、日本初演があった。

ほぼ3日間、リンパが腫れて臥せていたもので、見ることができなかった。
本橋内科クリニックで抗生物質の投与を受けてようやく快復基調に。医学は偉大だ。

今週9月8日、土曜日のコンサート、は、
「電子音楽マニアなら、彼の名を聞けばチャウニングやマシューズと並ぶ初期のコンピュータ音楽の最重要人物とピンとくるのでは? そのリセがサントリーの現代音楽祭のテーマ作曲家として来日する。」と、紹介される作曲家、ジャン=クロード・リセ。

サントリーホール国際作曲委嘱シリーズNo.31
テーマ作曲家「ジャン=クロード・リセ」<室内楽>〜全曲日本初演
曲目 ジャン=クロード・リセ :「少年」のための音楽(1968)/ピエール・アレによる広島の惨劇についての劇より「ナカ」〜ソプラノと4楽器のための、「転落」〜2トラックテープのための
:ヴァリアント(1994)〜コンピュータ処理によるヴァイオリンのためのインタラクティブピース
:対話(1975)〜フルート、クラリネット、ピアノ、打楽器、指揮者のための
:Tri-IX(2002)〜ピアノのための
:1台のピアノのためのデュエット「3つのエチュード(エコー、ナルシス、メルキュール)」(1971)〜ヤマハ・ディスクラヴィア・ピアノのための
:蜃気楼III(1979)〜16楽器とテープのための
:共鳴する音空間(2002)〜8トラック・テープのための
:オスクラ(2005)〜ソプラノとコンピュータのための

フランスでは、1970年代に、トリスタン・ミュライユ、ジェラール・グリゼイ、ユーグ・デュフール、フィリップ・マヌリといった作曲家たちがコンピュータによる音響解析に基づいた新しい創作世界を探究し、それは、一般に「スペクトル音楽」または「スペクトル楽派」と呼称され、日本でも、1990年代に入ってからIRCAMで直接学んだ作曲家たちを通じて紹介され、非常に大きな影響力を放ってきています。

ところが、これまで、あまり紹介されてこなかったジャン=クロード・リセこそが、このスペクトル音楽に直接影響を与えた張本人であることが、3日に行われた講演で明解に説明されました。もちろん、今年のフェスティヴァルにリセを招聘した湯浅譲二氏は、まさしくその功績ゆえにこそ、リセの紹介を企画したわけです。

リセは、ヴァレーズの数少ない弟子のひとり、アンドレ・ジョリヴェ(音楽に呪術的、宇宙的、始原的世界を求めた作曲家)に師事しており、最晩年のヴァレーズに、音響解析の探究を奨励された筋金入りの作曲家です。
世界で初めて、音響を構成することで音楽を創造したのがヴァレーズ。
リセは、そこで、作曲のために使う素材自体をコンピュータによる音響解析によって作り出し、なおかつ、その素材をさらに独自の、時間と空間を折り畳むイメージに基づき、(そこには、聴覚という知覚を用いたエッシャーばりの錯覚の導入もあります)「作品」として組織していく、というプロセスを辿ります。

リセの音楽のキー概念は、
「音のなかで、時間を遊ばせること」
「響きのテクスチュアの固定化および流動化」
「特定の音の身振り(ゼスチュア)によって発展するプロセス」
「音響の内部のハーモニクスを取り出した個別のコントロール」
「架空の非物質的世界の響きを実際の器楽の響きと融合させる」
等々、となります。

いやはや、ヴァレーズの名前にがぜん聴きに行きたくなったリスナーも多いのでは。
ヴァレーズはチャーリー・パーカーのアイドルであり、フランク・ザッパの父であり、ジョン・ゾーンの神であるという、そういう作曲家の孫弟子は電子音楽の始祖のひとりである、わけです。3000えんで聴けるのか。行けるひとはいいなあ。


Niseko-Rossy Pi-Pikoe |編集CDR寒山拾得交換会musicircus

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