Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2005年07月30日(土) |
スティーヴ・ティベッツCD復刻2作レビュー【Jazz Tokyo既掲載分】 |
『ファースト / スティーヴ・ティベッツ』 (究体音像製作所 QSCA-1017) \2200 発売中 『チョ / チョイン・ドロルマ&スティーヴ・ティベッツ』 (究体音像製作所 QSCA-1019) \2200 発売中
スティーヴ・ティベッツ(1954〜)の2作品が究体音像製作所(いつもラインの読めないリリースが魅力的!)から日本リリースされた。
ジミー・ペイジmeetsエクスペリメンタル然とした自主制作デビュー盤『ファースト』(1976)と、ECMレーベルから一転して“ティベッツ(Tibbetts)がチベット(Tibet)へ行った”『チョ』(1997)である。
ティベッツの魅力は、彼のチョーキングによる独特のギター音が醸しだす音色の陶酔感にある。マリファナの吸い方をいろいろ研究していた当時の若者たちにあって、ティベッツもまた音の夢に到達していたのか。のちに「釣りびとが緩やかに凍死してゆくかのような」と形容されるサウンドのヴィジョン、これをECMのプロデューサー、マンフレット・アイヒャーが彼の自主制作第2作『Yr』(これは後にECMレーベル正規番号で再発される)に見出していたことは明白で、続くECMデビュー作『Northern Song』(1981)では、サウンドの描写を削ぎ落としたアイヒャーの過剰な関与をもたらす結果となっていた(私はこの作品をどのジャンルの価値基準からも逃れるECM屈指の名盤であると考えている)。
当時ティベッツはこの作品が大嫌いであったことを述懐している。
彼が果たしたい野望は、自分のスタジオで制作したその後のECM5作品で示したような、ダイナミックに構築されたスペクタクル感を主軸にした音楽であった。(ちなみに『Big Map Idea』ではツェッペリンの「Black Mountain Side」のカバーから始まっている。) そして、これらの作品は、今思えばアイヒャーへの反抗といった意味合いもあったのだ。
ECMから離れて発表された近作『A / KNUT HAMRE and STEVE TIBBETTS』を聴くと、81年に受けた最初の暴力がトラウマとなっていたことが推察された。じつに『Northern Song』で父(=アイヒャー)から授けられた道を歩んでいるように響いているものである。
『ファースト』を聴きながら、そのギタリストとしてのサウンドの発想の中に、未熟ではあるものの70年代後半のミネアポリスに現れたパンクやプログレを内包したジミー・ペイジのオルタナティブ、といった見方が可能であることを発見した。
いずれにせよ、90年代にはデヴィッド・シルヴィアンの作品にケニー・ホイーラーらとともにサウンドの彩りとしてフューチャーされていたほどのティベッツの個性に焦点が当たることは嬉しい。
スティーブ・ティベッツのサイト→■
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