Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2004年02月22日(日) |
パット・メセニーの最高傑作は『Quartet』である。パット・メセニーの夏の匂い。 |
2・16の日記でBay City Rollersの「You Made Me Believe In Magic」を思い出していた。 そういえばThe Policeの「Every Little Things She Does Is Magic」という曲もあったよなー、 マジック、つえばそんまま、Pilotの「Magic」というのもあっただなー。 どの曲も、子どもの頃に心のヒットチャート1位になってがんがん耳の中でリピートさせていた曲。
▼ 「メセニーの女性ヴォーカルとのライブ、いいですよ」 「え?そんなCDあるんですか?」 「以前、メセニーはNOAというヴォーカリストをプロデュースしたことありますよね。その声とも通ずるもので、メセニーの嗜好がはっきりあらわれていますね。」 「はあ・・・NOAは聴いてないもんで・・・。」 「たださんにとって、メセニーの最高傑作は何ですか?」 「・・・『Quartet / Pat Metheny Group』。」 「じつはぼくもそうなんですよ。」 「え!ほんとですかー?はじめてですよ、そんなひと。メセニーにとっての創造のピークって、2つあるんですね、『The First Circle』の時点、それから、『Secret Story』『Zero Torelance For Scilence』のダブル・リリースした時点。」 「ダブル・リリースではなかったはずですが。」 「いやいや、『Secret Story』をはじめて聴いたとき、こんな傑作を創造してしまったメセニーは死ぬかもしんねー、と、まじに思ったし、そういう心配をしていたんですよ。それで、相次いで『Zero Torelance For Scilence』なんて途方のないノイズをマーケットに提出して、それでメセニーは救われた、と思った。」 「たださん、ミュージシャン殺すの好きですねー。」 「パターンですね。メセニーがインタビューにこたえて“この二つの音楽はぼくの中で同時に鳴っている音なんだ”と発言したのを読んで、ぼくはほんとそのように聴こえていたリスナーだったから、ひどく納得していました。」 「ぼくも同感でした。」 「メセニーはECMを離れて良かったんです。ECMにいたままだと、オーネット・リスペクトな作品、『80/81』『Rejoicing』は作れたけども、オーネットとの共演(『Song X』)は果たせなかった。」 「ゲフィンに移籍していきなりオーネットと共演しましたね。」 「ECMはドン・チェリーともチャーリー・ヘイデン、ポール・モチアンとも制作してきたけども、大将のオーネットだけは制作できなかった。オーネットも自分のレーベルを作っていたから、縁が無かった、と言うべきか。」 「そうですかね。」 「オールド・アンド・ニュー・ドリームスというグループがあったでしょ、ドン・チェリー、デューイ・レッドマン、チャーリー・ヘイデン、エド・ブラックウェル、この4人がクールにオーネット・リスペクトをしている。70年代後半のオーネットの沈黙に対する制作だったと読むと、オーネットはいやがったかもしれない。」 「もっと本能的なものな気がしますけど。」 「まあね。そのECMでの作品(『Old And New Dreams』『Playing』2作品ある)については、砂上の楼閣である、という批評がジャズ誌に載ってて、あとからその記述するところがこっちもわかってきたところがあるけど。すごくいい作品だけどね。」 「思えば、ECMはジャズに切り込んでいたラインが70年代後半にありましたね。」 「ECMはなんとかニューヨークのジャズ・シーンの捕獲を試みているようなところがあるんだけど、84年前後の、ECMニューシリーズ発足と、ジャック・ディジョネットのデビッド・マレイを擁したスペシャル・エディション、メセニーの『ファースト・サークル』、ジャレットのスタンダーズ録音、と、足並みが揃った時期がECMの分岐点だったかもしれない。ジャズ・レーベルを模索するのか、クラシックのレーベルになるのか。ECMのアメリカ側のスタッフが新生ノンサッチに抜擢されたのも、平行して。」 「そうでしょうね。メセニーは『Still Life』『Have You Heard』『We Live Here』『Immaginary Days』をECMでは作り得なかったかもしれませんし。」 「『We Live Here』はまったくダメです。『Immaginary Days』を素晴らしく感じる気持ちはわかるけど、あの壮大さの表現は自己模倣によるもので、単にピカソ・ギター1本のヒラメキで表題曲の“だし”が取れた、ってだけです。その“だし”の完成形が『Quartet』で、彼はそれ以降、この作品以上の新境地には出てきていません。」 「『Trio Live』という傑作を忘れていませんか?」 「だから、メセニーはできるんですよ、ああいう演奏も。要は、表現におけるリスクの取り方、みたいなもんです。」 「『ミズリーの空』『Pat Metheny & Jim Hall』はどうですか?」 「別格にいいですね。なんだかんだ言っても、下の世代は上の世代に勝てないです。単に才能という問題ではなくて。なんつうか、儒教的な態度でもいいんだけど、自分たちの上の世代の成果も失敗も含めて、どう受け取ってゆくか、は、メセニーに勉強させてもらいましたです・・・。」 「そんなもんですか。」 「そんなもんです。じゃ、とにかく最高傑作『Quartet』を改めて聴きましょうか。」
今日の定義:パット・メセニーの最高傑作は『Quartet』である。
パット・メセニーにとってピカソ・ギターというのは、非西洋音楽の導入、民族音楽との一体化、という“最終解決ギター”である。 微分音という言い方はしないけども、“チューニングされていない弦の響き”への強烈な希求をそこに聴き取れる。
体験的に、ギターという楽器こそがジャズ、ロック、クラシックといったジャンル(これ自体確固としたものでは実はないが)の垣根を、有効に越境できる楽器であることを、ぼくらはマルク・デュクレ、ビル・フリーゼル、エリオット・シャープ、ユージン・チャドバーン、そしてこのパット・メセニーなどから知らされてきている。それぞれ、じぇんじぇんちがうタイプのギタリストだけど。
▼ パット・メセニーの夏の匂い。
『Upojenie / Anna Maria Jopek & Friends with Pat Metheny』を聴いてて襲われてしまった。 ここで取り上げられている「Are You Going With Me」のビートのアレンジはブッゲ・ヴァッセルトフトが示唆したような感覚のもので、それを土台に女性ヴォーカリストのAnna Maria Jopekさん(アンナ・マリア・ジョペックかな?読めないですー)が独自のヴォイシングで楽曲をまるで新曲のように生まれ変わったものにしている。そしてハイライトで、パット・メセニーのギター・シンセ(あのトレードマークの音だ)が出現した瞬間に襲われてしまった。
「Are You Going With Me(邦題:ついておいで)」はパット・メセニー・グループの81年の作品『Off Ramp(邦題:愛のカフェオレ)』に収録されているナンバーだ(それぞれ、邦題がなんとも80年代を感じさせている)。 コンサートのオープニング定番のナンバーで、『Off Ramp』のスタジオ録音からライブ・ヴァージョンとなって化けたナンバーだと思う。彼らの初のライブ・アルバム2枚組『Travels』での「Are You Going With Me」こそは、当時のメセニーへの熱狂を支えていた出来。
図書館の閉館BGMが、このライブ・ヴァージョンだった。
誰かはLP集めるのやめて水泳に打ち込み始めたらすぐに死んだり、誰かが貸しレコード屋のバイトを始めたり、誰かが海の家にバイトをしに行ったきり退学したり、たった半年会わなかっただけで長い旅から戻ったように後輩に会ったり。マージャンとLPレコードとガールフレンドだけで人生を過ごし続けることができる、と、まじで思っていた。
中央線はがたがたと揺れて走っていたし、駅前も狭かった。銭湯へパンツ一丁と手ぬぐいだけで出かけていたし、夏には下駄をはいて帰りには古本屋に寄ったような気がするし、中華料理屋で「にくやさいたまごおおもり」か「ればにらたまごおおもり」を食べてアパートまで歩くと、昼間に水まきした残りに自転車が通る音がして、パチンコ屋のにぎやかな音が夕方の雑踏に混じりはじめていた。
閉館する図書館から見る空のオレンジ色と藍色のグラデュエーション。何度か、鎌倉とか湘南とか城ヶ島とか江ノ島とかへ出かけて、日に焼けた夕暮れを過ごしていたような気がする。昼間のガールフレンドと夜のガールフレンドがいたような気がする。実際はアルバイトで忙殺されていたはずなのに、たくさんの出来事が日々起こっていたような気がする。火照った足の裏を図書館のフロアにペタっとあてて、閉館のBGMを聴いていると、今夜も楽しいことが起こるような気がして、明日も暑い日差しの一日になるような気がした。
日が暮れてアパートに戻ると、発売されたばかりの『クリスタル・サイレンス・ライブ』を聴いたような気がする。チック・コリアとゲイリー・バートンのコンサート。マージャンのメンツを集める電話をかけて、クーラーなんてなくて、アミ戸の風で涼んでいた夏の夜は、夏の匂いがした。
ベストヒットUSA系のコンピレーションCDで『東京エイティーズ』というものがある。80年代の前半に大学生だったマーケットを狙ったもので、イラストのジャケには、LPレコードをターンテーブルに置いてDJをしているカップルや、テニス・ラケットを胸に聖子ちゃんカットをした女子大生が公衆電話をかけているシーンなどが描かれている。
the music i listen today - Upojenie / Anna Maria Jopek & Friends with Pat Metheny
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