Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2004年02月03日(火) |
『Terra Nostra / Savina Yannatou』(ECM 1856) |
昼間に、友だちとCD持ち寄り会をしていたジャズ喫茶でいきなり『The Trio』がかかって、 「やっぱこん時の(ジョン・)サーマンはすげえや」と腰に手をあてた(あ、満点のポーズね)。 「バール・フィリップスのベースもまたすごいね、果敢な突っ込みとサウンドの揺さ振りー。」 「サーマンはECMに録音するようになってから当時のジャズファンから見放されたよね。」 「でも、あの孤独感はたまらないものがある・・・」 「まあ、孤独感というコトバに還元してしまうのもどうかと思うけど。」
ウード奏者のアヌアル・ブラヒムのサウンドを聴くと、地中海〜アラブへの郷愁を深く感じさせる。 ■アヌアル・ブラヒムのサイト
サーマンとこのブラヒム、そしてホランドが作った『シマール』 『Thimar / Anouar Brahem - John Surman - Dave Holland 』(ECM 1641) ■Thimar ECM1641 わたしはECMジャケ派ですから、この暗がりの草むらに潜んで彼方から聴こえてくる三者のサウンドに、それこそどっぷり浸った。 ノスタルジー、喪失感、郷愁、孤独感、そして静かな精神状態が深夜を覆うような、そんな音楽だ。 作品としても、なんと言うか、完成されたものを感じる。
この作品はイギリスのマーキュリー・ミュージック・エンタープライズという賞にノミネートされて、この賞は音楽評論家の団体みたいなものが毎年10枚ほどレコード屋とタイアップして認定して、マーケットで販売展開をする。いわば批評家たちがジャンルを横断して選んだ「これがオススメ」というディスクをリスナーに問うわけだ。 それもあって、この『シマール』はそこそこ売れた。
2003年のECMを振り返るのに聴いた『テラ・ノストラ』に、この『シマール』と地続きな音楽的成分を強烈に聴いた。 『Terra Nostra / Savina Yannatou』(ECM 1856) ■Terra Nostra ECM1856
“ECMがこの作品をライセンス・リリースした意味は大きい。アイヒャーは、この地中海〜アラブのラインにジャズのルーツのひとつが確実にあるということを認識している”と、評価する声を聞いていた矢先であったし、 嶋田丈裕さんが主宰しているサイトで、年間ベストにも挙げられていたのである。 ■TFJ's Sidewalk Cafe
平井玄さんの■『引き裂かれた声―もうひとつの20世紀音楽史』(毎日新聞社)(>1・25日記参照)を読むと、 ルーマニアから地中海に沿ってアルジェリアの村まで、2000キロに及ぶ広大な旋律の採集の旅をしたバルトークは、ウクライナ、イラク、ペルシアにも及ぶ音楽の共通性に気付いていたようである。
この音楽の磁場は、ビザンチン〜微分音〜ジョーマネリへと続かないのだろうか。 妄想がわく。というより、耳の欲望が性急な乾きの音をたてている。
最後に平井さんのテキストを引用
“マグレブやトルコのメロディーに強く惹かれたブダペストのバルトークの方向感覚は、「アメリカ的なもの」としてジャズを取り入れたベルリンのヴァイルやクルシェネクのそれとは異なる方向を指していたのである。”
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