休日は - 2007年03月29日(木) 家で一日中寝ている。 珍しく、昨日と今日と2連休が取れた。 いつものように寝ていた。 すると父に起こされた。 「○×の家で竹が伸びて大変らしいから、切りに行かなければならん」 と、遠縁の親戚の名を挙げた。 その親戚とは高齢のために自力で生活ができない女性で、今は高齢者マンションに住んでいる。 認知症も進んでおり、わたしは葬式や法事で顔を合わせるたびに 「あのう、失礼ですがどちらさんでしたか?」 と尋ねられる。 父が成年後見人になっている。 ということで、今朝は早くからその親戚宅の裏手に密生している竹を切りに行ってきた。 非常に気が重かった。 なんでこんな天気がいいお昼寝日和の朝っぱらから、竹やぶの中で薮蚊や笹の葉と格闘しながら竹を切らなければならんのか。 三寸ばかりなる人がいとうつくしうてゐたるとでもいうのか。 それからはもう切る竹切る竹黄金ザクザクなのか。 そうだったらいいのに。 あぁやだ。やだ。 必要なことだとわかってはいるのだが、どうにも気が重かった。 父は知り合いからチェーンソーを借りてきていた。 そんなもん振り回して大丈夫なのか。 間違えて足とか腕とか切りはせんのか。 自身もまた老いてきた足腰でどこか頼りなくエンジンをかける後姿を見ていて、本気で心配になってきた。 そんなこんなで、チェーンソーで竹を切り倒してはナタで枝葉を払い落とし、一箇所に集めてゆくという作業が続いた。 小さな草木も道程でなぎ倒しながら、ざくざくと竹を切り続けた。 竹以外のなんかようわからんうっとうしい木の枝も、片っ端からのこぎりで切り落としていった。 チェーンソーのチェーンが外れてしまった。 父がそれを直している間、わたしはひたすら木々の枝を切り落とし続けた。 あるいは、すでに倒した竹の枝葉をナタで払い落としていた。 竹の葉の向こうに、路地を歩くおじいさんがこちらを見てニコニコとしているのが見えた。 「こんにちは」 わたしは笑顔をつくって挨拶した。 「あはは、こんにちは」 おじいさんは、なぜそんなにおもしろそうに笑っているのだろう、と思った。 「精が出ますね」 「いえいえ」 また愛想笑いをしながら、わたしはある感慨に浸っていた。 「精が出ますね」 ということばをかけられたのは、生まれて初めてかもしれない。 よく聞くことばだ。 NHKの朝ドラとかでよく聞く気がする。 小鳥の鳴き声もさわやかな早朝、まだ舗装されていない家の前の路地を竹ぼうきでせっせと掃く、うら若き主人公。 そこにねじりはちまきの魚屋が、かくかくと四角張ったデザインの自転車で通りかかる。 「いよう、ジュンちゃん」 「あら、源さん」 「こんな朝から精が出るねぇ」 「うふふ、源さんも」 「はは。そうそうジュンちゃん、今日もいいネタ入ってんぜ」 「まぁ。じゃ今夜はお魚にしようかしら」 「ジュンちゃんにはおまけしとくからさ、寄ってってよ」 「いつもありがと」 「いいってことよ。じゃな!」 ナタの使い方の要領を得て作業が波に乗ってきた頃、勢いよく振り下ろした拍子にナタの刃が柄からスポーンと抜けた。 焦った。 想定外の出来事であった。 さらにそれはわたしの足の甲に落ち、骨のところを鈍く直撃した。 案外痛くなかった。 刺さりもしなかった。 よかったと思う。 そういうことでナタの使用を取りやめ、のこぎりで木の枝を切り落とす作業に専念することにした。 木の枝というものは意外と切りやすい。 これも波に乗ってくると、止まらない。 時間を忘れて没頭していた。 気がついたら、見違えるように日の光がとおり、明るく風通しのよくなった竹林。 肉体はさわやかな疲労感に包まれている。 こういうのもたまにはいいかもな、いや、むしろ必要なのかもな、と思ったのだった。 -
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