すこし怖くてせつない夢 - 2005年06月26日(日) 一人暮らしの友達の部屋のテレビが壊れた。 彼はそれを修理に出そうとして電気屋さんに電話したのだが、話しているとき 「あ、それはちょっとわからないので母に代わります」 と言って、子供っぽい笑みを浮かべながらいきなり私に受話器を手渡した。いたずらだ。 私は苦笑しながら、ちょっとマダムな声色をつくって彼の母親のふりをした。 「いやぁ、ずいぶん若いお母さんですねえ」 電気屋さんはちょっと面食らったようだった。 「あ、あら。うれしいわぁ。うふふ」 なにやってんだろ、私。 彼に受話器を返した。 彼は遊びに来ていた私に夏布団をすっぽりとかぶせて、私の姿が外から見えないようにした。 私が誰かに見られるのもいやなんだって。 なんて激しい独占欲。 そして優しくキスをしてくれた。 あぁ。幸せ。 中学からの帰り道。 家まであと5分。 「ここから、めちゃくちゃゆっくり歩こうか」 私はいたずらっぽく笑いながら横を歩く彼に提案した。 彼は見かけは10歳ぐらいだけど精神年齢は私よりはるかに高くて老成していて、でも子供っぽいのだ。 内向的でいじけんぼうで、偏屈で独占欲が強い。 めがねをかけていて、黒い髪が女の私よりきれいだ。 展望台では、麻のドレスを着た女の人たちが次々とふもとから登ってゆく。 前に見た星と同じ星が見えるのかな? ここでよかったのかな? 私は彼の制止も聞かず、見覚えのある満天の星空を探して、必死に駆け登ってはときどき立ち止まり、さまざまな角度から空を見上げる。 どれも似ているけれど、少し違う。 最上部に着いた。 バーのカウンターがあって、ガラスでできていた。 その上に裸足でよじ登り、記憶と重なることを願いながら頭上に広がる星空を再び目を凝らして見つめる。 やっぱり、少し違っていた。 つまらない。 そう思い、私はカウンターの向こう側に下りて奥に歩いていった。 奥は酒場になっていて、大人たちがジョッキを傾けながら談笑している。 母が私のところに来て尋ねた。 「お父さん、ここに来てるはずなんだけど…」 実は知っていた。 さっき偶然見かけたから。 でも父は私を一瞥しただけで、黙って奥に歩いていってしまったのだ。 話しかけたって、俺のことなんかどうせ邪険に扱うんだろ。 偏屈で、内向的でいじけんぼうで甘えん坊。 母とふたりで歩いていると、一人で寂しくグラスを傾ける父を見つけた。 母が迎えに行く。 私はほっとして、弟たちを探した。 10歳ぐらいの上の弟が横を歩いている。 あれ? もう私より背が高くなっていたはずなのに。 こんなに小さかったかなぁ? そのへんの席に座っている男の人たちが、みんな父の顔になっている。 白髪のしわだらけの父。30代の父。今の父。 下の弟が、母に手を引かれて歩いてきた。 きゅっ、きゅっ、きゅっ、と、子供用スリッパの音がする。 あれ? あいつも私より背が高くなってたはずだよなぁ? なんであんなに小さいんだろう? きゅっ、きゅっ、きゅっ、というサンダルの音はわたしが幼稚園の頃に愛用していたピンクのサンダルの音と同じ音で、なつかしくなって微笑んだ。 そのサンダルも弟にあげちゃったんだ…。 でも男の子にピンクは合わないよ。 あぁ、青く塗りなおしたんだっけ…。 目がぐるぐると回り、目の前が真っ暗になり、私はぐらっとそこに倒れてしまった。 倒れるときには頭を地面に強く打ち付けてしまい、とても痛かった。 あぁ。痛いなぁ。まぁいいか。よくあることだし。 目を開いているのに、まだ真っ暗のまま。 あぁ。息ができない。 意識的に吸っても吐いても、胸が詰まって呼吸ができない。 息ができない。 真っ暗だよ。 こわいよ。 さびしいよ。 苦しいよ。 誰か助けて、誰か助けて こわいよ、こわいよ、こわいよ 目が覚めました。 シュールな夢だった。 記憶とは少しずつ違っていたけれど、でも何度も見上げた満点の星空はすごくすごく、とてつもなくきれいでした。 -
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