「乳と卵」川上未映子著 第138回芥川賞を受賞した作品。このささやかな連休中に読んだ本の中の1冊。
東京に住む、主人公の女性のもとに、大阪から、40歳になる姉の巻子と、その娘の緑子が訪れる。その目的は、巻子の豊胸手術のため・・・たった、3日間のストーリー。それも、ほとんどが、主人公のアパートの一室で展開する。
僕は、この作品での川上さんの文体が、非常に新鮮に感じた。句読点の付け方が、他の作家とは明らかに違う。とにかく句点までの文章が長い。そして、大阪弁まじりの言葉を、これでもかこれでもかと、力強く繊細にたたみかけていく。とても新鮮で印象的な文体だ。
女性だからこその感性というか、あらゆる事象についての比喩表現も、川上さんならではのおもしろさがある。そこには、根底に哲学思想という深いものが感じられるんですよね。
緑子は、豊胸手術のことで頭いっぱいの母・巻子、そして、女性の生理現象に、ストイックなまでの嫌悪感を持ち、しゃべることをせず、すべてを「筆談」で会話する。小説の中で、緑子の日記が、幾度と書く登場するが、これは、女性でしか書けない、男が読むと、けっこう印象的な言葉がならぶ。そう、「乳と卵」について、特に。
文体の繊細さ、そして勢い。 それに、ぐっと最後まで引き込まれていく、そんな小説な気がした。 ただ、この小説に、豊胸手術というのが大きい一つの鍵になっているのだが、感情が噴出すラストの後、そのことは結局どうなったのだろう?という思いもちょっとした。
僕は、テレビやラジオ、雑誌などで、たくさん川上さんを見ている気がする。彼女の生きてきた軌跡は、とても興味深かったし。
先日、中川翔子さんと、竹熊健太郎さんと3人で対談しているテレビ番組をたまたま見ていて、「自分が子供を産む」ということについて、川上さんは、この小説の「緑子」と、おなじようなことをいっていたことに気づいた。
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