Land of Riches


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 2023年10月08日(日)   CONFIDENT 

◆この記事には刀ステ山姥切国広単独行のネタバレがあります◆

Whatever we do, we do with conviction.
We make strong statements, we are bold and we believe in ourselves.
(私たちは何をするにしても、信念を持って行う。
私たちは強い意志を表明し、大胆であり、自分自身を信じる)

これは私が刀ステ七周年感謝祭と刀ミュすえひろがりに着ていったPUMAと
刀剣乱舞コラボTシャツ織田組バージョンにプリントされているフレーズです。
PUMAのブランドバリューに合わせて4種類が2021年12月に発売されました。
BRAVE:勇気(新選組5振り)・CONFIDENT:自信(織田組4振り)・
DETERMINE:決意(江のもの4振り)・JOYFUL:喜び(伊達組4振り)でした。

刀ステで初めて出陣男士が1振り限定の単独行。単独行とは修行僧が山籠もりして
行う修行を指す言葉だそうで、「単騎出陣」のように汎用性あるワードではありません。
円盤先行もなく、東京公演が銀河劇場(過去作では虚伝再演と悲伝が上演)と
キャパシティ少なめなのもあって1枚もチケットが取れず、2日目ソワレの配信で見ました。

新しい作品が出てくると過去作の見方がガラッと変わるのが刀ステのお約束。
今回は綺伝とまさかの七周年感謝祭が餌食になりました。まさか感謝祭での
「入れ替わってる〜?!」が伏線になるなんて思わないじゃないですか。
(落語独演会が伏線では考察してた方もいたので今後が怖い…)
末満さんがTRUMPで役を入れ替えるリバースをやるのは知識として知ってましたが。

原案ゲームでの修行、すなわち手紙3通を冒頭5分で片付けた(聚楽第と同じ)
山姥切国広は本丸には帰還せず、過去の戦いで遭遇した歴史人物ほぼ全員を突き動かす
織田三郎信長の生き様を見届けるべく、家臣になりたいと15歳の本人へ志願します。
しかし信長は動機が曖昧だと拒否。入れ代わり立ち代わり現れる多くの信長と共に
山姥切国広は草薙剣の神話から西南戦争まで日本刀の歴史に想いを馳せます。
想いを馳せる=相手に成り代わって体験する様を空想する、です。
これを荒牧さんがアンサンブルと共に鬼のような早着替えで消化していきます。

回転する円形の八百長舞台上で各時代の装束に着替えながら異なる武器を用いて
殺陣を行い、加えて訛り込みの日本史用語の膨大なセリフを喋る荒牧さん。
荒牧さんは歴史好きを自認していますが、それにしてもの酷使です。

そして、山姥切国広は私たちのトラウマでもある、どこか(悲伝)で見た
浜辺にたどり着き、三日月宗近に想いを馳せます。山姥切国広から見た三日月は、
師のような存在。録音された慟哭する山姥切国広の台詞に涙腺を破壊されながら、
あの戦いを綿密にトレースする荒牧さんに圧倒されてしまいました。
こんな心身に負荷のかかる再現を時には1日2公演もするなんて…。

山姥切国広は朧軍団に襲われ、折られてしまいますが、審神者がふくのすけ
(三日月に似たデザインだとXの考察で初めて気づきました)に預けていた
刀剣御守・極で復活。極の姿になった山姥切国広でさえ如水に圧倒されますが、
見込みがある奴は泳がす性分の如水に解放され、意を決して円環に飛び込みます。
三日月だけではなく本丸全体がループしている(明確に覚えているのが三日月だけ。
骨喰や燭台切、宗三など一部の焼けた刀はループに気づきかけている?)と
明らかにされ、煤けた太陽というワードさえ変質してエンディングとなります。

これから始まろうとしている虚伝ありますよね……アニメで……。

織田信長は日本人に想いを馳せられすぎてていて、あまりに多くの創作信長が
生み出されているのは刀剣乱舞関係なくても有名な話です。FGOにはその事象を
サーヴァント化した『魔王信長』という☆5アヴェンジャーがいて、配信を見ながら
彼/彼女の姿がずっと脳裏にちらついていました。あの魔王を構成する要素を
分解したら単独行で舞台を埋め尽くす大勢の三郎信長になるんでしょう。
髭があったりなかったり男だったり女だったり犬だったり猫だったり。

単独行の三郎信長はあらゆる創り出された織田信長を全肯定していました。
ゆえに、山姥切国広にもあらゆる可能性があると。刀剣乱舞はあまたの本丸があり、
コモン打刀の山姥切国広は、それこそ星の数ほどいるでしょう。グッズ含めたらもっと。
メディアミックスにも、いろんな山姥切国広がいます。ミュみたいな変化球も。
その全てを肯定する。「俺はあんたの刀だ」と語る極めた彼の真意は、
あんたの解釈・あんたの物語で編まれた男士という意味だというある方の解釈、
刺さりました。作中でも審神者が死んでも物語は残っていて、それを負のエネルギーとして
如水に注ぎ込まれた結果、黒い山姥切国広が朧に変質する情景が描かれていました。
もしかすると、如水をはじめ朧の歴史人物は物語が生んだものかもしれません。
それこそ、義経がチンギスハンになった…みたいな妄想から。

如水は信長を救いたいと言いました。綺伝では三日月を…と言っていた覚えありますが。
想いを馳せれば像は増えます。如水は逆にそれを朧信長に一本化しようとしていました。
刀剣乱舞ではそれを習合と呼びます。刀剣乱舞音頭で軽く♪乱舞レベルを上げましょう♪と
歌われていた行為です。物語を切り捨ててたった一つの『史実』を求めるのは
学問でもあるのでしょうが…だから如水が中ボスの役を務めているのでしょうか。

過去作全てを変質させる、陽の光で照らしてくれるような作品でした。
荒牧さんとカンパニーの皆様が心身共に健康で大千秋楽を迎えられるよう願うばかりです。

2023.10.9 wrote


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