Land of Riches
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2023年08月21日(月) |
後悔は生きて経験する最高の地獄 |
ミュージカル「ヴィンチェンツォ」で一番印象に残ったセリフがタイトルです。 (Netflixドラマ版の日本語訳は微妙に表現が違い、私は舞台版の方が好き) 後悔だけはしたくないと、中学時代に岐阜で開催されたプロ野球の試合を 受験勉強優先で見送って以来、ずっと考えて生きてきたつもりですから。
癖が強く、日本でも一部に熱狂的な支持者がいる韓国ドラマ。 翻案してミュージカル化するプロジェクトの主導はエイベックスです。 和田さんは、彼を2.5次元舞台に引きずり込んだ張本人である吉谷さんが 演出だという理由で主人公のオファーを引き受けたようです。この主人公、 原作ドラマでは多くの女性陣から一目惚れされ、また男性陣からも立ち振る舞いで 心酔される(終盤では韓国版カサノファミリーが爆誕してしまう)カリスマの権化。 吉谷さんは小劇場の舞台に立つ和田さんに初見で射抜かれ戦国無双のオーディションに 誘った経緯を持つので、きっとヴィンチェンツォに重なったのでしょう。 (そして舞台戦国無双の主催・マーベラスが和田さんを長谷部へ推挙する流れに)
ストレートプレイでなくミュージカルになったのは、90分×20話=1800分の 原作ドラマを3時間強の演劇へ圧縮するに際して、歌で状況や心情を説明できる ミュージカルの方が適していたからでしょう。ミュージカルの経験が乏しい 和田さんはボイストレーニングを頑張る羽目になるのですが。加えて、 ヴィンチェンツォは格闘術に長けている設定(現代劇ゆえ固有武器があるわけではなく、 拾ったパイプで殴ったり、蹴り飛ばしたり)のため、キックボクシングにも励みます。
10分の1に圧縮するのですから、劇中の展開は非常に速く、言ってしまえば 終始ダイジェスト版状態。3時間越えの作品は長さを苦痛に感じがちですけど、 世間での評判通り、今作は時間の長さを忘れてしまう没入度に圧倒されました。 (あと原作から引き継いだ要素ではあるのですが、シリアスな親子愛や復讐で 涙腺を熱くさせられるかと思えば、客席参加型のコメディシーンも随所にあって テンションのアップダウンが凄く激しいのも時間経過を感じさせない要素かも)
和田さんのトレーニング成果は刀ステの七周年感謝祭やリアフェのライブパートで 実感していたのですが、それでも今作は脇をがっちりと歴戦のミュージカル猛者で 固めてもらっており、また相対するヒロインが初ミュージカルとは思えない パフォーマンスを披露した日向坂46の「すーじー」こと富田鈴花さんで、 これまた見事な歌を聞かせて下さったので、まさに『別に身長がないわけでもないのに 周囲の男士が長身揃い過ぎて相対的に可愛く見えてしまうへし切長谷部』状態。
富田さんは今回が念願の初ミュージカルだそうですが、初なのが信じられません。 今作は堂々と歌い上げればそれで済む作品でもなく、父との相克、ギャグシーン、 ヴィンチェンツォとの分かりづらい恋愛…と表現しなければならない要素が てんこ盛りだったのに、何一つ不足を感じませんでした。良いヒロインに恵まれたと思います。 (7/23に公式SNSで公開された和田さんインタビューがグダグダで、猫ひたで インタビューに慣れている和田さんにつっこまれまくっていたのとは別人のよう…)
彼女のファンらしき男性も客席にはたくさんいて、また韓国ドラマは日本での 支持年齢層が高めなのもあってか、和田さんを見に行く客席は普段、その9割が 女性(それも若い人が多い)なのですが、今回は驚く程に老若男女の幅を感じました。 多様な客層に和田さんの演技を届ける機会が得られたのも、良かったと感じました。
圧縮するにあたり、展開を主人公母子とヒロイン父子周辺にまとめる工夫もあったようで、 現実世界でも家族を大切に思っている(ゆえにTVドラマに出たいと強く願っている) 和田さんの演技は涙腺が熱くなりました。板の上でも目元に光るものがあったような。 韓国と日本とでは家族を巡る文化が少し違うんだよな…と感じる場面も時々あったり。
母を奪われたヴィンチェンツォはラスト、銃殺など生ぬるい…とマフィア仕込みの 怖ろしい殺し方で敵を葬ります。入場者特典カード、9分の4は和田さんが引けるのに、 ラスボス(配布時にはそう書かれてません)を引いてしまう自分の運に苦笑いです。
総じて、和田さんはとても大変だったと思いますが、素晴らしい作品に 巡り合わせてくれたことへの感謝で胸がいっぱいです。今回も通路席だったので、 目の前に来たクムガプラザの住人に笑顔で手を振ってみたり、和田さんがすぐ隣を 歩いて行ったり(背が高くて頭が小さいと思いました…)する幸運にも恵まれました。
椎名鯛造さんの感想=このミュージカルの稽古をしながら刀ステ感謝祭に出たのか、には 120%同意しかありません。感謝祭の稽古合流が直前になるほどヴィンチェンツォに 心血を注ぎながら、末満さんに努力の跡が見えると言われるレベルで落語を仕上げ、 かつリアフェでも段取り間違えたりもしましたが、あれだけの歌唱を披露。
ザ・テレビジョンの連載では、感謝祭での出番の多さは末満さんの愛を感じると 言ってましたけど、休む時間があるなら台本読んだりダンス動画を見たりしたいと ワーカホリック発言もあって、ヴィンチェンツォのスーツ姿とても良かったですが、 掌を見ても骨と皮だけに見える…と心配にもなってしまいました。
東京楽だったので最後に座長の一言挨拶があって、和田さんファンにはお馴染みの、 こんな時代ですけど一緒に生きていきましょう…というフレーズだったんですけど、 この言葉、そっくりそのまま和田さんにお返ししたい心境です。しなやかに生きて、と。
2023.8.26 wrote
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