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Land of Riches
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| 2022年05月19日(木) |
Sword of Light and Shadow |
沖縄県の本土復帰50年を記念したトーハク→キューハク巡回展『琉球』。 第二尚氏王朝の宝物である日本刀3振りも出展されました。
当初は千代金丸だけが展示をリリースされていて、千代金丸は那覇で見たことが あるんだけどな…と勝手な感想を抱いていたのですが、とうらぶコラボ発表と共に 北谷菜切と治金丸も出展されると分かり、二度行くしかないか!と腹をくくりました。
しかも今年はトーハク開館150周年のメモリアルイヤーで、秋には国宝刀剣を 一度に並べてくれる特別展が予定されて(ゆえに現在の総合文化展の刀剣展示は トーハクとは思えぬ地味なラインナップ。もちろん名刀ばかりですが)いますし、 5/12からはSCRAPの謎解きもスタート。これに合わせて二振りを見に行くの 我慢していたのですが、満を持してたどり着いた窓口でイヤホンを忘れたのに気付く…。 (正確には窓口の人に指摘される。専用アプリのDLとイヤホンが必須。 これはキットや博物館内掲示での提供情報を減らし、動画閲覧によって進行するため)
せっかく前夜に劇場版无伝干渉を片付けておいたのに…と自分にガックリしながら 平成館に向かいました。男士3振りのパネルは1Fラウンジと事実上隔離されていて、 普通に見に来た方にはパネルが全く目に入らない(存在に気づく可能性は グッズショップのみ)という導線管理に驚きました。国宝展でとうらぶコラボあるでしょうか。
琉球王国は長い歴史と海洋貿易国家としての活躍があるのですが…展示物を見て 真っ先に感じたのは、初見の品が多くはない(那覇や渋谷で見覚えのある 紅型が結構あったりした)こと。キューハクへの巡回もありますし、 布や紙は金属と違って展示替え(そもそも刀剣すら展示替えがあるのだから)が 細やかに必要なのもあります。それ以上に、琉球王国の遺物は20世紀の沖縄戦で 地上から多くが焼失したという現実を痛切に感じました。今回の特別展、 最終コーナーは復元物で6章立てのうち1つを構成しているぐらいなのです…。
男士のモチーフとなった3振りが現存しているのは、琉球処分で王家が東京移住を 命じられた、本来であればネガティブな出来事の産物。尚家は他にも多くの品を 割と最近、沖縄に寄贈したりしているのですが、その品の一部さえ、 2019年10月の火災で焼失したりしているのです。また、沖縄戦で戦火を潜り抜けても アメリカ軍が持ち去り、遺族がオークションで売り払ってしまった品もあるそうです。
私は焼け落ちる前の再現首里城を、2015年、フロンターレの沖縄キャンプを見に 初めて沖縄を訪れた際に見ました。私がとうらぶにハマった一因として、 船山さんがフロンターレでレギュラーを獲得できなかったことがあるのは 残念ながら事実です。私自身の過去と、沖縄の歴史。とうらぶで3振りが ヤマトの歴史を守っているのに違和感を覚える人(那覇でパネル展示以外の コラボが行われなかったのは展覧会のスポンサー企業の財力の関係だと 私は考えていますが…)がいるのも分かりますし、琉球の歴史に想いを馳せる トリガーがよりによって3振りだった、つまり3振りがいなかったらこのジレンマを 近くすることさえなかっただろう苦い現実が、審神者には重くのしかかります。
それはともかく、初めて見た北谷菜切の研ぎですり減った(とうらぶではこれを 大事にされていたと解釈)刀身と煌びやかな拵え、治金丸の本土との刀との 近しい印象は、「京のかたな」展で輸送費を予算から捻出できず、北海道の刀の展示を 断念した事実を思い起こせば、巡回展示してくれること自体があまりにも奇跡で、 この目で見られたこと(しかも東京で)を深く心に刻み付けるしかないのでした。
他の展示では琉球漆器が印象に残りました。総合文化展でも漆工は1コーナー常設ですが、 本土の漆器は大体が黒地。しかし琉球では眩しい太陽を写したかのような 鮮やかな朱色の地が多かったのです。これに夜光貝を原材料とする螺鈿細工が 施された美しい工芸品。そして、琉球産なのに権現経由で尾張徳川家が所蔵している…。
北陸遠征でも感じましたが、徳川美術館の所属品、本当にどこの展示を 見に行ってもあらゆるジャンルエンカウントするので、幅広さに唸らされます。
歴史の光と影を強く感じる鑑賞となりました。総合文化展との対比でなお一層。
2022.5.21-22 wrote
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