Land of Riches


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 2019年08月18日(日)   羽目を外す 

【注:この日記には「三体」「新選組のレシピ」「QQユアストーリー」の微ネタバレがあります】

評判の高さを見聞きしながら、ハードカバーだからという理由で躊躇していた
中国SF「三体」を思い切って購入しました。別の「新選組のレシピ」という文庫本と一緒に。
(後者は薄桜鬼を彷彿とさせながら現代的なノリで押し切るタイムスリップものでした。
なんでも投稿サイト・エブリスタの優秀作品らしく、そう言われれば納得できるかも)
ハードカバーだと躊躇うのは値段もさることながら、本棚で占める体積が大きいから。
現に今も読み終えた「三体」は他の本の上に横置きの形で置かれています。

三体、というのは作中に出てくるVRゲームのタイトルでもあります。
SFがSFであるために必要な超科学的要素は、ゲームという前提でハードSFみたいな
物理学的考証を完全限界突破(笑) とうらぶで「放棄された世界」と前置きしたら
歴史考証必要ないかも…とちょっと考えてしまったのと同じ感じですね。

ただ、これはVRゲームだから!とラストでばらして総スカンくらっている
映画ユアストーリーとは異なり、三体の凄みは主人公が突飛すぎる考えに至る経緯、
その精神崩壊の過程にあまりにも現実世界の色濃い影響を感じさせるのです。

SFでありながら、本は主人公の父親が文革の嵐の中、よりによって妻(つまり主人公の母)に
告発されて刑死させられる場面から始まります。あまりに過激すぎて、
中国国内での出版ではこのシーンは途中に回されてしまった程です。

語り手であるもう一人の主人公は現代に生きる科学者。先述の三体ゲームを糸口に、
娘を失った主人公(こちらの一家はほぼ全員物理学者という設定)に巡り合います。
ゲームが開発された意図とは…と大ボリュームで繰り広げておきながら、
人類を超越した存在と接敵しただけで終わってしまうという大風呂敷。
これ畳めるのかと思いきや、中国語版は2010年で既に完結済、
2冊目は今回の1.5倍のボリューム、最終巻に至っては…という調子だそうで。

私は完結していないものを読むのが苦手なので、2巻の日本語訳発売が
2020年だという発表だけでもイライラします(笑) 英訳はあるらしいので、
英語を勉強すれば済むんですけど…これでも第二外国語は中国語だったのですが。

文アルノベライズ以来、寝るのも忘れて読みふけることが多くなってますね最近。
三体には日曜の午後を全部持っていかれました。ノンストップで読了です。
ヒューゴー賞受賞なのにバカSFと評したくなる、文系にはその緩さがいいのかもです。
こんなに面白かったSFは「ニューロマンサー」以来だと思いました。

ちなみに三体のスケールがどのくらい破天荒かを示したエピソードとしては
オバマ氏が大統領時代に、この物語のスケールと比べたら議会なんて…と
逃避して読みふけっていたくらいだそうです(笑) 凄いですね。

2019.8.21 wrote


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