Land of Riches


IndexBeforeAfter

 2017年07月03日(月)   聴覚 

学生時代以来からの宿願にも等しい「子午線の祀り」観劇してきました!

会場は三軒茶屋の世田谷パブリックシアター。700人しか入らない小さな劇場です。
最前列や一番脇に椅子をぼてっと置いて発売してたり、そもそもこの日の公演は
プレビューで本公演より安かったり、小さい劇場なのに価格設定は複雑。
とは言え、3階席がぶっちぎり安いのはすぐ理解できました。

子午線の祀りは基本的には群読劇なんですけど、マイク使わないんですよ。
地声! だからキャストの顔の向き次第で非常に聞き取りづらい!
3階席なんかもっと聞こえないと思うんです。

古典から現代劇までさまざまなジャンルの演劇人が集まって群読をする作品、
今回は古典の萬斎さんが知盛で、現代劇の成河さんが義経です。

語り物たる平家物語の原文(正確にはあずま男が坂東武者になっていたりと
改変はされている)を読みあげる場面も多く、普通の人は予備知識なしでは
「新中納言知盛卿」とか「本三位中将重衡卿」とか「大臣殿」とか
互いの呼び名すら分からないんじゃ?!と思いながら見てました。
おおいどの、ってのは宗盛の呼び名なんですけど。内大臣だから。

平家一門では数少ない武勇の人だった知盛は、
一の谷で若干16歳の息子・知章を犠牲にして生還。
ここから心境に変化があり、人間の力及ばぬ天運の化身のような影身の内侍と、
往生際悪く海外に逃げ延びてでも戦い続けようとする阿波民部重能との間
揺れ続けます。

知盛は弟の妾である影身を人として愛するのですが、影身を和平の使いとして
京にやるのは逃げ腰だと考えた民部によって影身は殺害。影身の亡霊は
どうしようもならない滅びの宿命と、虐げた民の怨嗟を知盛に告げ続けます。

一方の源氏は、義経が頼朝の御家人にとどまることを良しとせず、
幾度もなく梶原景時と対立(ここで宥めるのが知性的な弁慶なのは珍しいと感じました)。
後白河院と頼朝と自身の全ての望みをかなえられない現実に思考停止した義経は
ただひたすらに平家滅亡だけを望んで西進します。

迎えた運命の日。潮の流れを知盛も民部も義経も熟知しており、
東流の間に源氏を追い落とせなかった平家は事実上の敗北がその時点で決定。
義経は舵を漕ぐ者は討たないという不文律を破り、反撃に出ます。

徹底抗戦を唱えていた民部は逃げ道をふさがれたことで頭が真っ白になり、
義経に投降。嘆きの叫びさえあげますが後の祭り。平家一門は海に沈むしかなかったのです。

知盛の、そして物語最後の台詞が「影身よ!」という絶叫なのは、
原作を岩波文庫で読んだので知ってましたし、どういう風に演じるのか
一番楽しみにしていたのですが、萬斎さんは両腕を高く掲げて
「影身よー!!」と絶叫してました。なんと言うか、子午線の祀りの知盛は
平家物語の運命を悟った哲学者っぽいのとはやや違って、人間くさかったですね。
知盛が寡黙だというのは新平家で刷り込まれた私の幻想なんですが(笑)

個人的には「影身よっ」と口走りながら海に飛び込むイメージだったのですが。
(碇知盛と混同してる?)

「されども名こそ惜しけれ」とか「見るべき程のことは見つ」とか
平家物語の有名なセリフが出てきた時には、観劇で涙ぐみそうになりました。
私はだから平家が好きで源氏があんまり好きじゃないんですよね。
とうらぶでも源氏ゆかりの刀や薙刀はレベル低いですし(苦笑)

死ぬまでに生で見られて良かったです、本当に。

2017.7.4 wrote


やぶ |MailWeblog