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 2016年05月21日(土)   長谷部漬け4/5日目:映画「日本刀」 

前売りのカード式ムビチケが通販限定で、劇場まで行ったのに
取り扱いがないと言われた「映画日本刀」をTOHO日本橋の初日に見てきました。
2日連続の劇場ですね。

クラウドファンディングによる宣伝費用集めが行われ、
正直、集める過程自体が宣伝ではないかと勘ぐったりしました。
予告編から刀剣乱舞の三日月に寄せたトーンである鳥海さんのナレーションは
心地よすぎて眠気を誘い、寝ずに見終えられるか、
若干の不安もありましたが、無事にきちんと鑑賞することができました。

ポスターでは、一部とうらぶでもお馴染みの名物刀剣の名前が
ずらりと並んでいましたけど、その登場はわずか。
やはり、所蔵元が提供する画像を映画館のスクリーンで拡大するのが
精一杯の演出なので、元資料によっては大画面に追いついてない画質も。
柳川・立花家史料館の講演会では、Google art projectの精密さを
耳にしましたけど、これからの資料鑑賞はwebが一番なのかもしれません。

映画になって良かったと感じられた部分は、800年の伝統を誇る
月山刀匠の作刀過程と、室町時代から続く本阿弥家の研ぎでした。

出羽三山の霊場で起こり、神秘性を他より色濃く持つ月山派の特徴は、うねる綾杉肌。
先日、東京富士美術館で古い月山から先代、当代までの月山派による作品が
並んでいるのを見ましたけど、どれも見事な綾杉肌だったのを思い出しました。
(行くか迷っていたけれど、富士美術館行って正解だったと初めて感じられました)
実際には、綾杉肌は幕末〜明治に月山刀匠が関西に移住して以降に再現されたものとか。

とうらぶの資材としてお馴染みの玉鋼とて、現在では伝統的な工法で作れるのは
確か年に一度。4資材が全て出てくる作刀過程は、書籍等で知識は持ってましたが、
密着した映像で見られたのは勉強になりました。相槌を打つ音は映画クオリティでしたし。

とうらぶゲーム内での刀匠さんには文句を言ってばかりですし、
しんけんで熱された鋼をクリック連打するのは疲れるんですけど、
本物の鍛刀は数時間程度で片付くものではなく、心と体の集中を
ずっと問われるハードなものなのだと再確認しました。
月山派に児手柏の写しを依頼した水戸徳川家の選択は、間違い無さそうです。

そして鍛刀に比べると、取り上げられるケースの少ない研ぎ。
室町時代から将軍家そばで続き、江戸時代には毎月3日にしか出さない折紙で
絶大なる権威を誇った本阿弥家は、代々研ぎに携わる名家でもあります。
当代は18代目でしたか(月山刀匠もそうでしたけど、当代のみならず、
人間国宝に指定されていた先代も、昭和60年代の荒い映像を引っ張り出してきて
映画の一部に加えていました)、やはり研ぎ石の秘伝を今に伝える研ぎ師でもありました。

作中で研いだのは、錆だらけでかなりどうしようにもない状態だった古刀。
見ただけで鎌倉時代の、かなり優れた作品だと見抜いた当代でしたが、
どう仕上げるかを考えるため、まず1週間ほどはひたすら対象を見るとのことでした。

研ぎに何種類もの研ぎ石を使うのは、トーハクにある修復に関する展示コーナーで
知ってましたけど、とある種類は産地が京都府内のあるところに指定されていたり、
指先で数mm単位に砕いて使ったりするのだとは初めて学びました。

刃物の敵にしか見えない水で濡らし、時間をかけて丹念に研ぐ―刃文を見せるための
いわゆる化粧研ぎは初見で、その研ぎによって見る側の印象は全く変わってしまうと
改めて見せつけられました。仕上がったのは実に見事な一振りでした。

私は刀のかつての持ち主に興味のフォーカスがあって、博物館に保有されている
名物は大抵研がれていないのをよしとする(刀は研ぐと痩せてしまう)んですけど、
鍛刀や研ぎも、それはそれで後世に引き継がれなければならない技術です。

日本刀の世界は幅広いと、とうらぶブームで学習した文字知識を
しっかりとした映像で見ることのできる、良作だと思いました。
(でも60分で通常の映画料金と同一なのは、多少の愛情がないと目はつぶれないかもしれません)

2016.5.22+25 wrote/2016.5.25 update


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