橋本裕の日記
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2008年03月01日(土) 心の発見と理解

犬に鏡を見せても、写っているのが自分だと認識できないようだが、これは比較的知能が高いと思われるサルでも同じだ。鏡映像を自己と認識できる能力は3000万年ほど前に進化の産物として獲得されたので、この能力を持つのはチンパンジーなどの大型類人猿だけらしい。(ミッシェル、1996)

しかし、大型類人猿のなかでもゴリラはこの能力がない。これはいったん獲得した自己認識力を失ったのではないかという説がある。ゴリラは生活の必要上、幼いときから活発な身体運動をしなければならなかったので、身体能力の発達の犠牲になって、自己認識能力が後退した。しかし、完全にこの能力が消失したわけではない。ゴリラに人工言語を教えると、鏡による自己認識力が得られるという。(パターソン1984)

人間の場合は生まれて18ケ月になると、鏡像に自分が写っていることが理解できるようになる。そして、他人が自分と同じような「こころ」を持っていることをやがて理解する。自己認識力が他者認識力を深め、他者もまた「こころ」を持つことを発見する。これが3歳の頃らしい。

4歳になるとこうした自他の心のしくみの理解は完成するが、まだ他者の心を深く理解できるわけではなく、その行動はどこまでも自己中心的である。しかし5歳になると他者のこころの理解はすすみ、共感や同情を示し、協調して行動することができるようになる。もう忘れてしまっただろうが、これは私たち誰しもが経験した成長プロセスだ。


橋本裕 |MAILHomePage

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