橋本裕の日記
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| 2007年07月03日(火) |
コムスンとグッドウイルの闇 |
コムスンは人材派遣会社大手のグッドウイルの子会社である。会長の折口雅博(46)は防衛大学卒業後、任官拒否をして、日商岩井などに勤め、95年にグッドウイルを設立した。そして2年後の97年にコムスンを買収し、介護福祉の分野に進出した。このころ現首相の阿倍氏は自民党の社会部長として介護保険制度を推進している。
こうした国策に乗り、コムスンはみるまに業界トップの地位を築いた。一方、阿倍氏も小泉内閣で頭角をあらわし官房副長官になった。そして阿倍氏は03年にコムスンの広報誌5月号で折口会長と対談し、「コムスンは一生懸命やっておられる」などと持ち上げている。しかしこの頃、すでにコムスンは事業所指定を受けるために実態のない勤務状況を届けたり、介護報酬の水増し請求をしていた。たしかに「一生懸命」だったが、その内容が問題である。
厚生労働省はようやく今年6月6日に、「コムスン」に対して4年半のあいだ事業所の新規指定と更新を認めない処分を下した。これは事実上の「退場処分」である。介護報酬の不正請求や、処分逃れなど悪質な違法行為を繰り返していたのだから、厳しい処分が下ってもしかたのないところだ。
坂口会長は人材派遣業のグッドウイルでも「給料から不透明な天引きをしていた」事実が明らかになって、6月21日に厚労省が調査に乗り出すと発表した。グッドウイルは派遣一回あたり200円を保険料として給料から天引きしていたという。6月22日の朝日新聞によるとその対象は80万人で、総額は37億円だという。
1990年には労働者にしめる非正規労働者の数は5分の1だった。それがいまは3人に一人が非正規労働者である。こうした社会の労働環境の悪化背景に、ワーキングプアから最後の一滴をしぼりとる過酷な利益優先主義があった。こうしてグッドウイルは業績を伸ばし、わずか10年余りで業界トップの上場企業になった。04年11月に折口会長は財界総本山の経団連の理事になった。
いまや折口会長の総資産は500億円だという。40億円もする自家用ジェット機を所有し、「ホリエモンのは中古だがおれのは新品だ」と得意になっていたようだ。このような折口会長を「週刊現代7/7」は「弱者を利用し、自らの欲望のためにカネを搾取した、許されざる悪党」と弾劾している。コムスンやグッドウイルを通して折口会長がしてきた悪行の数々を知れば、こうも言いたくなる。
コムスンの老人ホームの買収に名乗りを上げた居酒屋チェーン「ワタミ」の渡辺美樹社長は、阿倍内閣の教育再生会議の委員をしている。阿倍首相にとっては、坂口会長が教育再生会議の委員でなかったことがせめてもの救いかもしれない。
そもそも小泉内閣が「痛みを伴った構造改革」の一環として推し進めた介護保険制度の狙いは何か。「週刊現代7/14号」で中里憲保さんがこう書いている。
<介護保険制度は、給付を抑制し、要介護者や家族の負担が増す方向で「改悪」された。その背景には高齢者医療者の負担を国民に転嫁しようと目論む政府と厚労省の意図が透けて見える。その一方で政府は、先に述べたように巨大資本の福祉ビジネスへの参入を導いた。
こうして日本の福祉は崩壊寸前にまで追い詰められてしまったのである。「一億総中流」と言われたのは、もう遠い昔のこと。格差はますます広がり、弱者が貧困に喘ぐのが、「美しい日本」の正体である>
利益優先の市場経済は、その自然な傾向として貧富の差を拡大する。これを適正なレベルに抑制するのが、社会的公正を目的とする政治の役割である。しかし日本の政治を担っているのは、阿倍首相をはじめ、二世、三世議員たちである。彼らによって庶民の生活とはもっとも遠いところで、大企業の利益を優先し、派閥や閨閥優先の政治が行われている。
この現状を何とかして変え、庶民の暮らしを優先した政治を実現しなければならない。そのためには私たち一人ひとりが「主権者」であることの自覚に目覚める必要がある。そして私たちをとりまく社会問題について認識を深め、政治を他人事としないで主体的に関わっていくことだ。まずは参議院選挙で主権者としての権利を行使しよう。
(今日の一首)
花咲けど見る人もなし忙しく 行きかう人の靴音さみし
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