橋本裕の日記
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2007年01月10日(水) I like melon.

 私たちが英語を勉強しはじめて、まずぶつかる壁が、「単数か複数か」や冠詞(a,the)の問題だ。とくに、名詞の単・複形の問題は日本語に名詞の複数形がないからよけいに厄介だ。たとえば、「オレンジが好きです」は英語でどういえばいいのか。つぎの4つの選択肢から選んでみよう。

(1) I like a orange.
(2) I like oranges.
(3) I like the orange.
(4) I like orange.

 答えは(2) I like oranges.

それでは「オレンジ」ではなく、「メロン」だったらどうだろう。

(1) I like a melon.
(2) I like melons.
(3) I like the melon.
(4) I like melon.

 答えは(4) I like melon.

 意外なことに、オレンジとメロンで答えが違っている。なぜ、メロンだと単数形を使うのか。学校で教えられた文法によれば、こういうとき、「数えられる名詞は複数形、数えられない名詞は単数のまま」とあったはずだ。

 I like apples.
 I like dogs.
 I like tea.
 I like baseball.

リンゴや犬は可算名詞だから複数形にする。お茶や野球はそうでないから、原型のまま用いる。これでいいはずだ。この文法規則を適用すれば、メロンは一個、二個と数えられるので、当然複数形だ。しかし、メロンやスイカ、ピザなどはネイティブは単数形を使っている。

 I like watermelon
 I like pizza

 なぜ単数形のか。それは複数形にすると、「私はたくさんのメロンを食べるのが好きです」という意味になってしまうからだ。オレンジやリンゴならこれでよいが、メロンやスイカは大きいのでそんなにたくさんは食べられない。そこで複数個食べきれないときには、単数形をつかうわけだ。もちろん他の表現も使っていけないわけではない。ただし意味が違ってくる。

(1) I like a melon.(メロンを1個まるごと食べるのが好きです)
(2) I like melons.(たくさんの(いろいろな種類の)メロンを食べるのが好きです)
(3) I like the melon.(そのメロンを食べるのが好きです)
(4) I like melon(メロンが好きです)

 このように英語では(1)〜(4)をその状況に応じてが使えわける。ついでに犬の場合も見ておこう。

(1) I like a dog.(たとえばペット店で、私は犬を一匹ほしい)
(2) I like dogs.(いろいろな犬が好きだ)
(3) I like the dog.(その犬が好きだ)
(4) I like dog.(私は犬の肉を食べるのが好きだ)

 ついでに、数えられない名詞の場合もみておこう。たとえば、ケーキ(cake)や水の場合だ。

(1) I like a cake.(1個のケーキがすきだ。ふつうは a piece of を使う)
(2) I like cakes.(いろいろな種類のケーキが好きだ)
(3) I like the cake.(その種類のケーキがすきだ)
(4) I like cake.(ケーキを食べるのが好きだ)

(1) I like a water.(1杯の水を飲むのが好きだ。ふつうは a glass of などを使う)
(2) I like waters.(いろいろな種類の水が好きだ)
(3) I like the water.(その種類の水がすきだ)
(4) I like water.(水が好きだ)

 私はダイアモンドが好きだというのは、

 I like diamond.

 私はダイアモンドを身に着けるのが好きだというのは、

 I like diamonds.

 このように、英語は単数形、複数形でいろいろな意味を使い分けている。たんに「単数」「複数」だけの問題ではない。[s」があるかないかだけで、意味がずいぶん違ってしまう。こうした英語の発想を理解することが大切だ。私たち日本人は「数えられる名詞」と「数えれない名詞」と分類して覚えているが、じつのところ、ほんとうの英語にはそのような区別はない。

「数えられない名詞」も状況によっては複数形になる。大切なことは、「意味で考えて、複数だと思ったら複数形を選ぶ」ということだ。「可算か不可算」にこだわる必要はない。

 I like chocolates.

 これは複数形にしたから間違いだと決め付けてはいけない。いろいろな種類のチョコレートを食べ比べてみるのが好きなのかも知れないし、それを収集したり、飾っておくことが好きなのかもしれない。あるいは、小さく包んであるチョコレートをたくさん食べるのが好きなのかもしれない。

 杓子定規に文法の規則で判断するのではなく、もうすこし柔軟に考えて、こうしたいろいろな場面が頭の中にイメージとしてうかぶようになれば語学もたのしくなる。文法があって「ことば」があるのではない。「ことば」があって文法があるのだ。これは日本語の学習の場合もおなじである。

(参考文献)
「目が英語を覚えてしまう本」 長沢寿夫 明日香出版

(今日の一首)

 正月にたらふく食べた同僚が
 われをうらやむわれは微笑む


橋本裕 |MAILHomePage

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