橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2006年11月05日(日) 自殺予備軍の子供たちへ

 福岡県筑前町で中学二年の男子生徒が首を吊って自殺したが、担任の教師が「出荷の出来ないイチゴ」などといじめとも受け取れる発言を繰り返していたという。教師がこうだから、この福岡県の学校では生徒間のいじめも頻発していたらしい。しかしこの学校はこの数年間、いじめはなかったと教育委員会に報告していた。

 昨年、571人もの未成年者(5歳〜19歳)が自殺している。しかし、文部科学省の統計では99年から7年間、いじめを主たる原因とする自殺件数は0だという。こうした臭いものに蓋をする事なかれ主義がいじめを蔓延させたのだろう。学校や教育委員会の社会的責任は重い。

 しかし、マスコミが学校や加害者を一方的に批判し、その反動で自殺した子供にあまりに同情しすぎるのも問題である。たしかに自殺した子供たちは最大の被害者だが、報道をするにあたって、自殺予備軍といわれる大勢の子供たちに与える心理的影響も配慮すべきだろう。

 この点で、今日の朝日新聞の「声」に、犬山市の関谷美津江(58)さんの、「自殺は罪です。報道も考えて」と題した投稿が掲載されていたが、一読して、たいへん共感した。一部を引用しよう。

<やはり、心配していたことが起こった。過剰な自殺報道による連鎖反応だ。いじめによる自殺がマスコミで連日取り上げられた時、自殺予備軍といわれる若者たちが、どんな気持でそれを視聴していたか>

<自分が死ねば、こんなにも世間が同情してくれるし、いじめたやつにも制裁が加えられる、と単純に考えるのも無理はない>

<苦しみから逃げるためにした自殺によって、一体、何人の人がそれ以上の苦しみをあじわうか。自分の命のみならず、他人の人生までどん底に陥れて、天国へなど行けるわけはない>

<くやしかったら生き延びてほしい。いじめのない社会をつくるために命をかけてほしい。救いを求めている人はたくさんいる>

 たしかに、私たちはときには心を鬼にして、自殺するのは本人がまちがっている、自殺しては駄目だと大声で叫ぶ必要がある。死ぬなよ、コラ、人生から逃げるな、と叱りつけてやりたい。

 あるいは、こんなふうに励ましてやりたい。人生は君が考えているよりもっと広大だし、いろいろな可能性があるんだよ。その可能性を自分で断ち切るなよ。死んだら終わりだ。だから絶対死ぬな!

 大切なのは、「君たちのことは、私たちが命を賭けて守ってやる。だから君たちもがんばるんだ」という大人の側からの熱いメッセージだろう。このメッセージを彼等の孤独な心に是非とも届けてやりたいものだ。


橋本裕 |MAILHomePage

My追加