橋本裕の日記
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政府は今年1月10日の閣議で、国民年金保険料の未納対策の強化を柱とする社会保険庁改革関連法案を決定した。これを受けて、衆院で法案の審議が始まった。おりしも国民年金の保険料を無断で免除していた社保庁の不正が連日報道されている。
法案では納付率を上げるために、未納者には国民健康保険(国保)を使えなくするなどの罰則規定を設けている。しかし、厳罰主義で問題が解決するとは思えない。アメリカなどでも起こっているいるように、医療難民が大量に発生しかねない。社会に混乱をもたらし、よけいに事態を悪くするだけだろう。
社会保険庁では、これまでも職員が国会議員や芸能人の年金加入記録を業務外で閲覧していたことが明らかになり、3千人以上が処分されている。こうしたことは許されないことだ。こんな役所が罰則規定で国民を脅そうというのだからたまらない。
一昨年の年金騒動のさなか、官房長官の諮問機関「社会保障の在り方に関する懇談会」が発足した。政府税制調査会長、連合会長、日本経団連副会長など、有力な布陣が注目を浴びた。
2004年7月の初会合で西室泰三・日本経団連副会長(当時)は、「全体を一元的、一体的に見渡した社会保障制度を構築するために、この懇談会は存在する」と発言し、大きな風を巻き起こすかに見えたが、最終報告書では年金改革について、「税ではなく保険料で維持することを基本に検討する」としている。結局これという成果を残せないまま尻つぼみで終わった。
石弘光・税調会長も、今年3月末の会合で「主要な制度改革の議論は外側で行われた。大きな目標をもって議論してきたが、外堀が埋まった中では大したことは言えない」と発言している。
年金を保険料で維持し、納付率をあげるために健康保険を脅しに使うというのはどうみても無理がある。結局、国民を置き去りにした政府主導、官僚主導の発想で、これからもみせかけの年金改革が行われるのだろう。政府案は改革案ではなく、改悪案である。
社保庁には1万7千人あまりの正規職員の他に、非常勤職員が1万1千人以上いる。あわせて2万8千人あまりの職員がいるわけだ。改革法案では、社会保険庁を解体し、保険料徴収部門は民営化し、本体はあらたに創設される「ねんきん事業機構」に委譲するそうだが、従来の年金体系や理念は温存するわけで、これはどうみても看板の掛け替えである。
こういう子供だましの小手先改革ではなく、「年金の国庫負担化」を実現して、国民に寄生する悪政のガンの存在そのものを除去して欲しい。国民にパラサイトして、その生き血すすり続ける機関を、これ以上のさばらしてはいけない。
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