橋本裕の日記
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2006年05月17日(水) ロシアのストリート・チルドレン

 学校で毎週1時間、「総合」という授業がある。1年生は「私たちの福祉と健康」というテーマでビデオを中心に、身のまわりの健康や福祉の問題を1年間かけて考えることになっている。先週は数年前に民放で放送された「ロシアのストリート・チルドレン」というビデオを生徒たちに見せた。

 ソ連が崩壊したあと、ロシアではエリティン政権のもと、大胆な民営化政策が行われた。石油、ガスといった国の基幹産業を次々と外資や国内の政商に売り渡し、その結果、大量の失業者が発生し、極端な格差社会になった。

 一握りの富裕層が出現するなかで、人々の平均寿命が縮み、犯罪が横行し、家庭が崩壊して、街にストリート・チルドレンがあふれた。ビデオはそうした荒廃した社会の底辺で生きる子供たちの悲しみを生々しく写し出していた。

 授業ではビデオを見た後、生徒たちに感想を書かせることにしている。私のクラスの生徒たちが書いた感想を、一部だけ紹介しよう。

<まだ幼い子供が自分ではたらき、食べていくなんて、日本では考えられないことだけど、もし自分がと考えたら、絶対無理だなあと思いました。しかも多いときで200円のお金しかもらえないなんてかわいそうです。3,4日で60円とか、考えられないです。みんな親になぐられたとか、追い出されたとか、親がいけないと思います。育てられないなら、最初から生まないでほしい。無責任だと思います>(女生徒)

<ロシアという寒い所で、家の事情によって帰る場所がなくなった。だけど必死に生きようとする子供たち。でも外で生きていくのには限界がある。どんな親だろうが、子供が立派になるまで育てるのが普通だと思う。さまざまな事もあるだろうが、もっと子供を真剣に育てる人がふえるといいと思う>(男子生徒)

<11歳の女の子は家を追い出されて、寝るところも食料もなくてかわいそうだった。マンホールに住んでいる男の子は家に帰れなくて、空ビンなどひろってかせいでいた。自分でかせがなきゃ生きていけないというのは、残酷すぎる>(男子生徒)

<実の親に家を追い出されて、帰りたくても帰れない。妹に会いたくても会えない。自分が生きていくのにせいいっぱいなのに、犬のめんどうを見たり、妹の心配をするストリート・チルドレン。シラミ取りにケシロン(ガソリン?)を使っているのにはビックリしました。このビデオを見て、私たち日本の子供は食べ物にも困らないし、雨風をしのげる家もある。わかっているつもりだったけど、あらためてそれがどれだけ幸せなことか実感しました>(女生徒)

<私には家族がいつも側にいて、学校という学ぶ場所があって、食べきれないほどの食料がある。この環境に自分は「感謝」というものを忘れていた。同じ地球に暮らしているのに、私たちの逆の生活をしていて、私たちよりもしっかりした考え方を持っていて、純粋な目をした子供たちに、大人はどのような目を向けているのだろう。真実ショックを受けた。そして彼らの親に対して怒りを感じた>(女生徒)

<自分より年下の子たちが、お金をかせいだりするのがすごいと思った。日本ではかんがえられないできごとが、ロシアだけでなくいろんな国でおきていると思うと、なんだかもうしわけない気がする。なんだか自分のなやみだとか、いやなことがちっぽけに思えてくる。日本でぎゃくたいをうけている子供は逃げたりして一人で暮らすなんてできないけど、それができるのがすごいと思った>

<とても寒さがひどく、夜になると−20度になる。とても寒い夜が過ぎていく。とても生活が苦しいのに、かせいだ金できちんと物を買い、犬に半分もあげていました。ナージャの夢は、妹と暮らしたいということ。アクセレイはロマとわかれて一人になった。とてもつらい。でも家にも帰りたくない。なぜなら、暴力がこわいから。みていて悲しい>(男子生徒)。


橋本裕 |MAILHomePage

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