橋本裕の日記
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昨日の子供の日も、すばらしいお天気だった。午前中は散歩や小説の執筆。そして午後から、小さな一人旅をした。行き先は、名古屋市星ヶ丘である。もう少し正確に言うと、そこから歩いて20分ほどの西里町の界隈である。17年ほど前に一宮に引っ越しするまで、7年間ほど住んでいたところだ。
昔住んでいた借家は、少し外装が変わっていたが、そのまま残っていた。庭に見覚えのある躑躅が咲いていた。夜間高校の教師だった私は、朝食を食べた後、散歩がてら近くの神丘公園のでっちょ池の横を通り、少し離れた喫茶店へ通っていた。
同じコースを17年振りに歩いた。でっちょ池の浮き御堂から池を覗いていると、大きな鯉が寄ってきた。むかし鯉に餌をやったものだ。鯉は私たち一家のことを覚えているだろうか。葦や水草が茂り、赤や白の睡蓮がちらほら咲いていた。昔のままの景色である。デジタルカメラで撮ったので、これを来月のHPの表紙写真に使おう。
さらに公園の横の坂を下り、大通りに出る。信号のある交差点を渡ると、その角が当時毎日通っていた「亀」という喫茶店だ。17年振りだったが、そのままの姿で健在だった。
店に入り、ママと顔があった。「あら、ひさしぶり」とママは驚いたように私を見て、「すこし痩せたようね」となつかしそうだった。「ダイエットしたんだよ」と私。「マスターは?」と聞くと、「最近調子が悪くて、でも私は病気一つしないのよ」と元気そうだった。
私はカウンターの近くの、ママの顔が見えるところに席を取り、よもやま話をしながら、持参した本をゆっくり読んだ。昔もそうだった。この喫茶店でコーヒーを飲みながら、たっぷり時間をかけて本を読んだものだ。トルストイの「アンナカレーニナ」やハイデガーの「存在と時間」などもこの喫茶店で読破した。
暑かったので、アイスコーヒーを注文した。そして、昔とおなじように1時間ほど本の世界に没頭した。帰りがけに、「またきてくださいね」とママが見送ってくれた。一宮の自宅からだと、JRと地下鉄を乗り継いで、1時間半はかかる。しかしまた、来たいと思った。こうして私の、ぜいたくな、満ち足りた休日の旅が終わった。
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