橋本裕の日記
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東京へ最近行っていない。三年前に、Tさん、その前年にOさんを誘って行ったきりである。「旅は一人旅に限る。人生も又一人旅なのだから」などと、偉そうなことを書いている割りに、私はあまり一人旅をしない。
どこかへ出かけるときは、たいてい人を誘う。一番手軽なのは女房だが、誘ってもあまり乗ってこない。「一人でどうぞ」と言われると、その瞬間に気持が冷えてしまう。何だか旅に出るのが面倒になるのである。
とはいうものの、この夏はどうしても東京へ行きたかった。昼間は国会図書館で資料を読み、夜は浅草で食事をしたり落語を聞いたりする。夏には青春切符がつかえるので、名古屋から東京までの往復の交通費は6千円未満、カプセルホテル代が3000円、浅草の寄席には後半だけでいいので、入場料が半額になる。食事代を合わせても1万5千円ですむ。ゆとりがあれば、浅草のロック座で、若い女性のヌードを満喫するのもよい。
これが私の東京旅行パターンだが、こんな貧乏を絵に描いたような融通のきかない旅に、妻や友人が付き合ってくれるわけがない。最初は「面白いぞ」とだませても、二度目はごめんだということになる。青春切符で東京へ行こうと思えば、半日はかかる。私は車中読書でつぶすので何ともないが、妻や友人達はまずこのことだけで後込みするのである。
というわけで、今年は一人旅をと思っていたが、3年生の進路指導や補習、部活動など、時間的にも心理的にもその余裕がなかった。そこで、この9月の連休に行こうと思ったのだが、これも部活動の試合が続きそうで、どうも無理のようだ。
以前は、公費の出張で旅行が出来た。行き先は迷わず「国会図書館」である。研修目的は「日本の数学の研究」である。和算の歴史や、日本における論理的思考の発達についての研究で、学校の雑誌に論文を書いたりしたが、国会図書館を選ぶのは他にいろいろな楽しみがあるからだ。
他では読めない本や雑誌がすべてそろっているし、昔の新聞なども読める。全国の新聞がそろっているので、私の故郷の福井新聞の現物をじかに手にとって読むこともできる。私がうまれた昭和25年4月に何が映画館で上演されていたかや、ラジオの番組の内容や、押し入り強盗の話まで、なにから何までわかる。これはちょっとした感激だった。これに味を占めて、国会図書館を訪れるたびに、必ず昔の新聞を読む癖がついた。
とくに今年の夏、国会図書館を訪れたかったのは、戦時中の新聞を集中的に読みたかったからだ。当時の世相を見るには、新聞を読むのがいちばんよい。当時の民衆の生活や感情が手に取るように匂ってくる。
<今日の一句> 古新聞 未知の世界へ ひとり旅 裕
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