橋本裕の日記
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オランダについて書きながら、ときどき私の頭にギリシャのことが浮かんだ。オランダはギリシャに似ている。早い時期に市民社会や民主主義が成立したこと、人間中心主義の合理的で自由な社会であったことなど、いろいろ共通点がある。
ギリシャ人にとってのエーゲ海はオランダ人にとっての北海だろう。オランダの諸都市も又、海上交通によって栄えた。ギリシャはペルシャの専制主義やローマの帝国主義に抵抗したが、オランダもスペインの専制支配に抵抗し、イギリスと覇権を争った。
ニューヨークは旧名がニューアムステルダムであるように、オランダ人の植民都市だった。オランダ人が最初にそこにやってきて町を造り、まわりに外壁をめぐらせた。今でもウォール街という名前に、その痕跡が残っている。地中海のギリシャの植民都市がローマ帝国よって奪われたように、オランダの植民都市も七つの海を支配したイギリス帝国によって奪われた。
オランダもギリシャもヌードの国だというのも似ている。ギリシャ人は一糸まとわぬ姿で体操や運動をし、その肉体美をきそって大理石の像にあらわしたが、オランダ人もまたヌードに寛容である。その精神性が明るくて開放的だという共通点が感じられる。
ルネサンスは文芸復興と訳される。具体的に言うと、ギリシャ的な人間中心主義の文化の復活である。14世紀のイタリアがその発祥だが、毛織物工業や北海貿易で経済的に繁栄してオランダでも、イタリアとほぼ同時期にその運動が始まっている。
油絵の技法を改良し、フランドル画派の創始者ともなったファン=アイク兄弟、16世紀になると「農民の踊り」で知られるブリューゲルが、農民や遊ぶ子供など,素朴な民衆の群像をえがいた。そして、「愚神礼賛」でカトリック教会を批判したエラスムスらが有名だ。
エラスムス(1469?-1536)はルネサンス期最大の人文主義者(ヒューマニスト)だと言われる。ロッテルダムに生まれ、ギリシア・ラテン語を基礎に聖書、教父や古典古代の著作を研究し、古典の校訂版を出版。カトリック協会の浄化、キリスト教信仰の純化を志し、新約聖書ギリシア語原典を精力的に刊行した。
彼は著作「痴愚神礼讃」(1511)で社会や文化の歪みを痛烈に風刺した。彼のキリスト教ヒューマニズムは福音主義や宗教改革への道を開いた。彼は晩年は国際人として各国を訪れ、最後はスイスのバーゼルで没している。ルターはエラスムスの思想に影響されて、宗教改革をはじめた。
このように、思想的にもオランダはギリシャの影響を濃厚に受け、その歴史や風土に共通するものも多い。ギリシャびいきの私がオランダに惹かれたのも自然な成り行きだろう。
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