橋本裕の日記
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オランダは1960年代に北海海底に天然ガスが発見され経済が潤い、70年代にはヨーロッパでトップクラスの社会福祉制度を誇る豊かな国になった、しかしその後、経済政策を誤り、景気が過熱してバブルが生じた。
そのバブルがはじけて、財政が破綻、社会保障制度が維持できなくなり、失業と社会不安が蔓延した。そして80年代になると失業率は12パーセントを超えた。このような経済政策の誤りによってもたらされた悲劇的状況を、世界の人々はかって「オランダ病」と呼んだ。
しかし、それから15年もしないうちに、オランダはこの悲劇的な経済破綻から見事によみがえった。現在オランダの失業率は3パーセントで、先進国のなかで最も低い水準である。そして経済成長率は3パーセントを超える高い水準を維持している。99年には25年ぶりに財政の黒字化に成功、国際機関によるビジネス環境の評価で世界第一位になった。これを世界の人々はいま「オランダの奇跡」と呼んでいる。
それでは、どうしてこんなすばらしい逆転劇が可能になったのだろうか。その秘密は、1982年に政労使が結んだ「ワッセナーの合意」にある。この合意にしたがって、政府はパートタイマーの雇用条件や税制、年金制度を正社員並に保証する法律を作り、これによってパートタイマーで働く労働者が増え、「ワークシェアリング」が実現し、失業率が大きく低下した。
オランダの労働者は、その生活設計にあわせて、�―亀截夏�(40時間)のフルタイム労働、�⊇亀截各�(32時間)の大パートタイム、�L鵤横飴�間程度のハーフパートタイム、�ぃ隠音�間以下の短時間パートタイム、と多様な就業形態を選択できる。
たとえば�,鉢�、�△鉢△箸いα箸濆腓錣擦如◆嵒徂悗韮院ィ機廚箸いζ�き方が可能になり、これが「コンビネーショントリオ」として共稼ぎの理想的パターンになっている。アメリカの2.0型に比べ、オランダの1.5型は女性が労働市場に参入しやすいシステムで、働きながら育児や人生のゆとりを大切にするという新しい「家族システム」を実現した。経済システムの改革がライフスタイルの改革と見事にリンクしている。
オランダの成功を受けて、「ワークシェアリング」は欧州で盛んに行われ始めた。失業率11%、400万人以上の失業者が溢れたドイツでは、まず10万人の従業員を抱えるフォルクスワーゲンが1993年暮れに「雇用安定化のための労使協定」を締結し、労働時間を20%短縮して、週休二日制から三日制へ移行するわりに、年収を10%カットして、過剰人員とされていた3万人を解雇するのを避けた。1996年には鉄鋼や繊維産業でも同様な労使協定が結ばれ、ワークシェアリングの動きが広まっている。
フランスでは今年の2月にワークシェアリングの考え方を取り入れた週35時間制がスタートしている。これは12%以上になった失業率を減らすため、政府主導で法定労働日の短縮を実現し、従業員21人以上は今年2月1日から、また21人未満の企業については2002年から適用されるようになったものだ。これによって当面、約57000人の雇用を確保・創出したと言われている。
「ワークシェアリング」は大切な出発点であり、やがてその効果が現れれば失業率は低下し、欧州経済は立ち直るだろう。しかし労働の分かち合いは、単なる失業対策として有効なばかりではない。労働時間の短縮は、自由裁量時間の増大であり、精神的にゆとりのある生活やライフスタイルの創造をうむ。それは新しい21世紀型産業の創出に結びつく。
日本では経済効率重視のアメリカ型グローバリゼーションの道を行くことが「構造改革」だと考えられている。ワークシェアリングという「共生の道」ではなく、弱肉強食を是とする「競争の道」を歩むつもりだ。この先リストラによる失業の増大がもたらす社会不安、犯罪の多発など社会システムの崩壊が懸念される。
日本にはもともと「共生の思想」が生きてきた。このすばらしい伝統を投げ捨てて、馴染みの薄いアメリカモデルに追随することは、戦前の日本がそうであったように、木に竹を接ぐような不整合を生じさせはしないか。その結果生じる、おそるべき事態を危惧しないわけにはいかない。
オランダの「ワッセナー合意」の背景には、治水の共同管理で養われた「協議、合意、統合」のコンセンサスを重視する伝統的な思想があったという。そうした伝統と国民性を生かすことで、オランダは生き生きと甦ることが出来た。今同じような不況にあえぐ日本が学ぶべきは、伝統的な共生原理に基づいたオランダの改革ではないだろうか。
(参考) 「オランダモデル」(長坂寿久、日本経済新聞社、2000年刊) 多様性の国オランダ
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