橋本裕の日記
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2001年08月17日(金) 細菌と人間の共生

 最近、また温水プールに通いだした。腹が出てきて、適当な運動をする必要を感じたからだ。4年前にプールで泳ぐことを止めたが、それから体重がかなり増えている。ズボンやシャツが苦しくなってきた。

 プールに通うのを止めたのは、皮膚炎が悪化したからだ。薬局で薬を買ってきて塗ったり、皮膚科の医者に通っても治らなかった。それが、プールを止めたら、嘘のように完治した。O−157の食中毒が騒がれていた頃だから、プールの水に多量の塩素が含まれていたのだろう。

 人間の皮膚にはブドウ球菌など雑多な細菌が何十兆と棲みついている。塩素は人間の皮膚に働いて、そうした共生菌を根絶やしにする。その結果、皮膚はバリアーを失って、外部からの病原体にさらされ、ダニなどの抗体が体内に入りやすくなって、アトピー性皮膚炎を生じやすくなる。

 皮膚はそこで「顆粒菌」という防衛担当の細胞を繰り出して、病原菌の排除にとりかかる。そのとき排出される「活性酸素」が病原体もろとも皮膚の細胞を破壊し、皮膚を化膿させることになる。私の場合もこうして皮膚炎が生じたのだろう。これからはなるべく消毒用の塩素の少ない温水プールを選ぶ必要がありそうだ。

さて、共生菌は皮膚以外にも棲んでいる。たとえばヒトの腸には乳酸菌や大腸菌など約100種類の細菌が100兆個ほど棲みついている。これらの細菌が食物の消化を助けたり、ビタミンを合成したりしている。さらには外部からの細菌感染にたいしてこれを予防する。

 ところが抗生物質や消毒剤を乱用すると、共生菌の生活環境が悪化する。そのとき一部の大腸菌はこれに対抗して、赤痢菌の毒素生産を促すウイルスと共生しはじめた。こうしてO−157型大腸菌が生まれたらしい。

 私たちは細菌や寄生虫と聞くと、悪玉のように考えて、これを駆除しようとする。こうした考えに沿って、様々な新薬が開発され、また抗菌グッズのような商品が出回るようになった。しかしその結果、私たちはアトピー性皮膚炎や花粉症といった厄介な病気を次々と背負い込むことになった。

東京医科歯科大学の藤田紘一郎教授は現代の過度な清潔志向に警鐘を鳴らして、「ヒトは無菌の国では生きられない。寄生虫、細菌、ウイルスを含めた、すべての生物と共生することで、本当の健康は得られるのではないだろうか」(「共生の意味論」講談社ブルーバックス)と書いている。

 作家の五木寛之さんは頭や手を洗わないそうである。石鹸や消毒液のない生活はさぞかし不潔で健康上問題があると思うかもしれないが、彼は健康そのものでいままでに医者にかかったことがないという。健康の秘訣は、あまり清潔志向に走らずに、いろいろな黴菌と仲良く共生することらしい。



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